憂鬱な学問と臨床検査技師 -さらなるSTEP UPに向けて-
- 准教授
- 梅澤 敬
- うめざわ たかし
- 細胞診断学(婦人科、頭頸部、膵胆管)、病理組織学、解剖学
私は28年間、臨床検査技師(細胞検査士)として東京慈恵会医科大学病院において病理診断を行う実臨床検査の場に勤務し、その後1年半、横浜市立みなと赤十字病院を経て、4月より本学の教員として臨床検査学科で教育に携わることになりました。私は臨床検査学科で病理分野を担当します。その病理学(=pathology)は、ギリシャ語でpatho(憂鬱)とlogy(学問)で憂鬱な学問と訳されます。病理分野は多岐に渡る疾病・疾患の成り立ちから学ぶため、継続した学習と根気が必要であるということでしょうか。しかし、臨床検査技師となるためには避けられない重要な科目の一つで病理診断には不可欠です。
病理診断を担う部署は、病理診断科、病院病理部、病理検査室等の名称で呼ばれています。その業務内容について私の恩師から病理のABCとして、病理解剖(Autopsy),組織診断(Biopsy)、細胞診断(Cytology)と教授されました。このABCを主軸として、病理分野は更に細分化され、多様な染色や標本作製過程の各技術、免疫組織(細胞)化学、術中迅速組織(細胞)診断,電子顕微鏡、遺伝子検査、医療安全など、それぞれの領域を極めたスペシャリストが病理診断業務において重要な役割を担っています。また、臨床検査技師の資格取得後、各団体の認定制度や資格試験を突破した高度な専門的知識とスキルを有するスペシャリストも活躍しています。本学の学生諸君においても、卒後は様々な認定試験の取得とスキルを習得し、専門職ならではの助言や報告ができる臨床検査技師を目指してもらいたいと望んでいます。
医療現場は様々な業種の医療スタッフとのチーム医療で成り立っています。病理分野に係る臨床検査技師の役割は日常診療上極めて大きいものです。その理由は、疾患の源からサンプルされた検体を用い、病気のタイプを詳細に判断する分類学に相当するからです。その診断により、多くの治療法(手術適応、手術範囲、化学療法や治療薬の適応)が決定されます。臨床的に指摘された病変部、すなわち“病気そのもの”を観察するため、病理は“確定診断”となり診療科の中核的存在です。一方、各市区町村で実施されるがん検診やドック健診のような無症状の人を対象に行うスクリーニング検査にも寄与し、子宮頸がん検診で臨床検査技師が活躍しています。子宮頸がん検診のスクリーニング検査を担う臨床検査技師は細胞検査士という認定資格取得が必須で、本学においても養成コースが設けられています。細胞検査士は、確定診断の一翼を担う治療に直結する職種であり、全臓器の疾患に関する豊富な知識が求められます。すなわち、細胞検査士は病理診断を行う病理医や治療を行う臨床医に対し助言できる高度な専門職です。細胞検査士養成コースは、国公立医科大学20校中4校に設置されており、本学は最も新しい大学となります。細胞検査士取得後は、国際細胞検査士のライセンスを取得しグローバルに活躍することも可能です。
現在では各診療部門の専門性が高く、臨床検査技師においても、その専門的知識や技術は医療に必須であり、「縁の下の力持ち」にとどまるものではありません。カンファレンスや学内外の学術活動を通しスキルアップも求められます。実践の場で活躍できる臨床検査技師を目指し学生の皆さんには、高い目標に向かって勉学に励んでもらいたいと思っています。大学4年間の努力は、必ず実を結ぶものと確信しています。私も教員として一心不乱に自分を磨き切磋琢磨して参ります。
私の実臨床での経験から伝えられるアドバイスは、「Practice makes perfect! Keep it going!」です。
