ドイツ誌「European Journal of Nuclear Medicine and Molecular Imaging」掲載(2024年4月4日オンライン)

Optimizing the pharmacokinetics of an 211At-labeled RGD peptide with an albumin-binding moiety via the administration of an albumin binding inhibitor

アルブミン結合阻害剤の投与によるアルブミン結合部位含有211At標識RGDペプチドの体内動態の最適化

鷲山幸信准教授のポートレート。眼鏡をかけた中年男性が微笑んでいる。

鷲山 幸信(わしやま・こうしん)

先端臨床研究センター 准教授

髙橋和弘教授が微笑みながらカメラを見つめる自撮り写真。ビジネスカジュアルの服装。


髙橋 和弘(たかはし・かずひろ)

先端臨床研究センター 教授

研究グループ

越後拓亮,宗兼将之,淵上剛志,鷲山幸信,三代憲司,若林大志,高橋和弘,絹谷清剛,小川数馬

概要

論文掲載雑誌:「European Journal of Nuclear Medicine and Molecular Imaging」 (April 4, 2024)

金沢大学新学術創成研究機構の小川数馬教授,三代憲司准教授,大学院医薬保健学総合研究科薬学専攻/次世代精鋭人材創発プロジェクト令和4年度採用選抜学生(博士課程3年)の越後拓亮,医薬保健研究域薬学系の淵上剛志准教授,宗兼将之助教,福島県立医科大学の高橋和弘教授,鷲山幸信准教授,金沢大学附属病院核医学診療科の絹谷清剛教授,若林大志講師らの共同研究グループは,標的α線治療(※1)のがん選択的な治療を可能とする手法の開発に成功しました。

核医学治療に用いられるα線は高い細胞傷害性を持ち,飛程が短いことから,α線放出核種をがん細胞に選択的に送達することができれば,少ない副作用で高い治療効果を得ることができます。特にアスタチン-211 ( 211 At)(※2)は,国内での製造方法が確立しているほぼ唯一のα線放出核種であり,近年,臨床応用に向けた 211 At標識薬剤の開発が盛んに行われています。

本研究グループは 211 Atによる標的α線治療を行うために,これまでの研究において,血液中に豊富に存在するタンパク質であるアルブミンに結合する薬剤 ([ 211 At] 1 ) を開発し,マウスでの実験で[ 211 At] 1 ががんに高く集まり,がんの増殖を抑制することを示しました。しかし,[ 211 At] 1 が血液中に長く滞留することから副作用が懸念されていました。そこで,十分量の[ 211 At] 1 をがんに運んだ後、[ 211 At] 1 と血中アルブミンとの結合を切る化合物 ( 3 ) を追加で投与することで、[ 211 At] 1 のがんへの選択性を改善可能か検討を行いました。 その結果,[ 211 At] 1 は血液中に滞留することなく,がん以外の正常な組織からも速やかに排泄されました。一方,がんへの集積はあまり低下せず,がんの増殖を抑制しました。このことから本研究をさらに発展させることにより,標的α線治療のさらなる効果増大,副作用の低下につながることが期待されます。(鷲山 幸信)

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