スイス科学誌「Vaccines」掲載(令和5年11月7日オンライン)

Antibody Profiling of Microbial Antigens in the Blood of COVID-19 mRNA Vaccine Recipients Using Microbial Protein Microarrays

微生物タンパク質マイクロアレイ法を用いた新型コロナワクチン接種者における微生物抗原に対する抗体プロファイリング

齋藤宏章博士が青い背景の前で医療用の服を着ているポートレート。

齋藤 宏章(さいとう・ひろあき)

放射線健康管理学講座 博士研究員

研究グループ

齋藤宏章、吉村弘記、吉田誠、谷悠太、川島萌、内山大雅、趙天辰、山本知佳、小橋友理江、澤野豊明、井元清哉、パクヒョンギ、中村直俊、岩見真吾、金子雄大、中山綾、児玉龍彦、涌井昌俊、川村猛、坪倉正治

概要

論文掲載雑誌:「Vaccines」掲載 (令和5年11月7日)

新型コロナワクチン接種は有効な対策であるが、接種による抗体価の増加がみられにくい人がいることが知られている。今回の調査では、新型コロナワクチン接種によって形成される抗体値と、新型コロナ以外の微生物に対する抗体価の関係の解析を行なった。調査では、福島ワクチンコホート調査の参加者から提供されたワクチン接種後の血液データを解析した。解析には福島トランスレーショナルリサーチ機構が開発した新型コロナウイルスの変異株を含めた2500種類の微生物に対する抗体の有無を一度に解析できる微生物タンパク質マイクロアレイ検査を用いた。
2回目のワクチン接種後(30日後、90日後、180日後)から3回目の接種後(60日後)まで4回の採血を解析した8名の結果では、ワクチン接種後の新型コロナ以外の微生物抗体の明らかな変化はなかった。オミクロン株以前の新型コロナの変異株は3回目の追加接種後にRBDに対する抗体が獲得されていたのに対し、オミクロン株(BA1,2,3)のRBDに対する抗体は認めなかった。
また、新型コロナワクチン接種後の抗体価(2回目接種後約90日後)と関係のある微生物抗体を機械学習で特定したところ、通常型のコロナウイルスと黄色ブドウ球菌が産生する補体回避分子(staphylococcal complement inhibitor)に対する抗体が関連している可能性が示唆された。
新型コロナワクチン接種者に対して網羅的に微生物抗体の測定を試みた初めての試みであり、このような検証が今後のワクチンの効果やワクチン接種継続の議論の際に重要であると思われた。

(齋藤 宏章)

連絡先

  • 公立大学法人福島県立医科大学 医学部 放射線健康管理学講座
  • TEL:大学代表024-547-1111(代)又は024-547-1891/FAX: 024-547-1889
  • 講座ホームページ: https://www.fmu.ac.jp/cms/houken/index-2.html
  • メールアドレス: hiros@fmu.ac.jp (スパムメール防止のため、一部全角表記しています)

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