英国科学誌「Scientific Reports」掲載 〔平成29年8月〕
Impact of sex, fat distribution and initial body weight on oxytocin’s body weight regulation
性別、脂肪分布、体重に対するオキシトシンの体重制御効果の有効性についての検討

下村 健寿(しもむら・けんじゅ)
薬理学講座 主任教授

前島 裕子(まえじま・ゆうこ)
薬理学講座 准教授
研究グループ
前島裕子、青山真人、坂本多穂、城島輝雄、 麻生好正、高須克弥、竹之下誠一、下村健寿
概要
論文掲載雑誌:「Scientific Reports」 (2017 Aug.17 (イギリス))
オキシトシンの抗肥満効果の有効性について ~肥満対策の新たな可能性~本学 薬理学講座の前島裕子 准教授、下村健寿 教授と高須クリニック(高須克弥 院長)の共同研究が平成29年8月17日に英国科学誌Scientific Reportsに掲載されました。
【研究成果】- 体の中に存在するオキシトシンは射乳や分娩を引き起こすホルモンとして知られていましたが、近年になって様々な効果が発見され自閉症などの病気に有効である可能性も指摘されています。その中で抗肥満効果があるという報告が相次いでいます。
- しかし、人に対する臨床検討ではオキシトシン投与の抗肥満効果について一致した見解が得られていません。
- 今回、マウスを用いて性別、脂肪分布、体重など様々な要因からオキシトシンの抗肥満効果の有効性を検討し、オキシトシンが有効となる条件(体脂肪率や体重など)を明らかにいたしました。これにより、将来の抗肥満薬としての臨床応用の基盤となることが期待されます。
福島県は沖縄について全国で2番目にメタボリック症候群の患者が多い県です。メタボリック症候群は福島県民の健康を考える上で深刻な問題であり、肥満の解消は最大の治療と考えられます。しかし現代医療を持ってしても安全かつ有効な肥満治療薬はありません。 一方、オキシトシンは体の中にもともと存在しているホルモンであり、近年になって摂食抑制ならびに体重抑制効果があることも報告されています。しかし、その効果をめぐっては統一した見解が得られない状況が続いてきました。 そこで今回、マウスを用いて性別、脂肪分布、体重などメタボリック症候群に影響を与える様々な因子からオキシトシンの抗肥満効果を詳細に検討し、その有効性を検討しました。その結果、高脂肪食を与えられて太ったマウス(ネズミの体脂肪率に換算して約36%以上)においてオス/メスに関係なく有効であることが証明されました。興味深いことに高脂肪食を与えられて体重が増加している程、その有効性は高いことも明らかとなりました。 一方で通常食を与えられて太っていないマウスには効果がないことから、メタボリック症候群の最大の因子である肥満に有効であることがわかりました。 さらにオキシトシンは皮下脂肪だけでなく、メタボリック症候群の最大の増悪因子である内臓脂肪も有効に減らすことが確認されました。 今回の研究成果は将来的に、人に対する臨床応用においてオキシトシンが有効な肥満患者を識別するための基盤となるデータとなることが期待されます。
(前島裕子・下村健寿)
詳細及び各お問合せについては、下記のプレスリリースをご覧ください。
- プレスリリース (PDF)
連絡先
- 公立大学法人福島県立医科大学 医学部 薬理学講座 主任教授 下村健寿
- 電話 024-547-1153 / FAX 024-548-0575
- 講座紹介ページ http://www.fmu.ac.jp/cms/pharm/index.html
- メール (スパムメール防止のため、一部全角表記しています)