第61回日本循環器病予防学会学術集会 Young Investigator’s Award  優秀賞(2025年5月受賞)

睡眠時間と死亡との関連に生きがいが与える影響

降矢正和氏

降矢 正和 (ふるや・まさかず)

疫学講座 MD-PhDコース生

研究グループ

福島県立医科大学医学部          降矢正和
福島県立医科大学疫学講座        江口依里、大平哲也
北海道大学大学院公衆衛生学教室 玉腰暁子
国立国際医療研究センター        磯博康

今回の受賞について

第61回日本循環器病予防学会学術集会

日本循環器病予防学会は、心疾患や脳卒中などの循環器疾患を予防・管理することを目的とした全国規模の学会で、約2,000名の会員(医師、保健師、看護師、管理栄養士、行政担当者など多職種)で構成されている。1966年に設立され、疫学研究や地域保健、生活習慣改善に基づく循環器病予防の推進に取り組んでいる。毎年開催される学術大会では、最新の研究成果や実践事例が発表され、保健医療従事者の連携・研鑽の場となっている。また、「循環器病予防療養指導士」の認定制度やeラーニング等を通じ、専門的な教育活動も活発に行われており、実践と学術の両面から国民の健康づくりに貢献している学会である。

賞について

「Young Investigator’s Award 優秀賞」は、日本循環器病予防学会の学術大会において、予防医学や循環器疫学分野で優れた研究を行った若手研究者に贈られる賞でである。公開された抄録を通じた一次審査を通過し、11人の候補者に選ばれただけでも大変名誉なことであるが、大会での口頭発表において独創性、研究の質、社会的意義、発表力などが評価され、最優秀賞(1名)に次ぐ栄誉として2名に授与された。

 

概要

本研究は、生きがいがあれば、睡眠時間が短くても死亡のリスクが高くならないのではないか、という仮説を検証することを目的とした。JACC Studyの対象者のうち、40~79歳の約7万人を平均16.3年間追跡し、睡眠時間を7群に分類、生きがいの有無と組み合わせた14群で、総死亡、循環器疾患、がん死亡のリスクを検討した。その結果、極端に短い(4.5時間未満)または長い(10時間以上)睡眠時間において、生きがいが「ない」群では死亡リスクが有意に高く、「ある」群ではその関連が弱まる、あるいは見られなかった。特に短時間睡眠群でこの傾向が顕著であり、生きがいが死亡リスクを緩和する保護因子として働く可能性が示された。睡眠時間と死亡との関連における生きがいの交互作用も統計学的に有意であり、心理社会的要因の健康影響の重要性が示唆される結果となった。
本研究発表は、2024年疫学実習(鵜澤朋、鵜殿藍子、髙橋唯人、降矢正和、丸井秀則、横川周)の内容を発展させたものである。

受賞の様子

連絡先

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