ホープツーリズムのすすめ

突然ですが、「ホープツーリズム」をご存知ですか?
ホープツーリズムとは、2016年から福島県が推進している旅行企画:被災地を巡る旅です。

被災地を巡る旅というと、「東日本大震災と原発事故という未曽有の災害を風化させない」ための旅行かな?と想像するかもしれませんが、実はそれだけではありません。その最大の狙いは、実際に被災地を巡ることで、復興に取り組む人々との交流や被災地の復興現状を踏まえ、その教訓を未来にどう活かせるか参加者一人ひとりに考えてもらうこと、にあります。被災という影の部分だけをクローズアップするのではなく、復興を通して未来への光を見出す旅行なのです。

このホープツーリズム、年々参加者が増えており、昨年度(2022年度)は過去最多の参加人数だったそう。今までどんな旅行プランがあったのかというと、JTBサイトに高校の修学旅行での導入例(2020年実施)があるので参考にしてください。

ホープツーリズム®を修学旅行に ~福島の今を「見る」「聞く」「考える」ことで学びを得る~
(JTB法人サービスサイト|学校・教育機関向け|事例)

上の例では、「いろいろな立場の方から話を聞くことで、さまざまな視点から東日本大震災・原子力災害を考えるようになった」「災害が起きた時に簡単に居場所がわかる通信機器の開発に興味が沸いた」という生徒の感想が紹介されています。多角的に災害をとらえる視点を持つことで災害時に必要な役割に気づき、災害が発生しても被害を広げない未来の仕組みづくりにつながる希望が見えてきますね。

そのほか、福島県観光物産交流協会が運営するサイトでは、ホープツーリズムの概要、施設やモデルコース、ツアー事例などもご覧になれます。

福島県ホープツーリズム(福島県観光物産交流協会が運営するサイト)

また、当講座が共催する福島災害医療セミナーでは6月に福島第一原子力発電所の視察コースを実施します。このセミナーは主に医療従事者と行政関係者を対象に、震災当時の状況や事故後の影響などを振り返り、災害時に求められる役割や行動などについて改めて考える機会を提供します。視察コースは、セミナー参加者を対象としたものではありますが、興味のある方はまずはセミナー(オンラインコース)の受講をご検討ください。次回のセミナーは11月に実施予定です。(福島県立医科大学災害医療総合学習センター

<参考記事>

被災地復興を後押し「ホープツーリズム」の参加者 過去最多に」(NHK|福島県のニュース)
4月25日(火)ホープツーリズムで実感する福島の希望」(NHK|Nらじ-特集)
富岡に「復興旅行窓口」開所 態勢強化、現地案内や視察先開拓」(福島民友新聞社 みんゆうNet|福島民友ニュース)
【5月24日付社説】復興旅行/質にこだわり満足度高めよ」(福島民友新聞社 みんゆうNet|社説)
世界国際フォーラム(2023.3)「復興の歩みを希望に 福島発「ホープツーリズム」の可能性」(Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン))
服部美咲(2019)「ダークをホープへ転じる旅」『日本原子力学会誌ATOMOΣ』61巻9号 p. 669_1