風評の払拭を願って

 暖かい日が続き、初夏らしい季節となってきました。暦の上では5月6日が立夏。フルーツ王国福島の夏と言えば、桃やさくらんぼなどたくさんのくだものが豊富な季節!!夏のうだるような暑さを思うとげんなりしてしまいますが、甘くて美味しいフルーツが食べられるのはとても楽しみですね。

 福島県産の食材については、原発事故後から風評被害の問題が取り上げられており、事故後12年経った現在でも不安に感じている方もいらっしゃると思います。東京電力福島第1原発で発生する処理水の海洋放出を控え、特に水産物に対して気にされている方が多いのではないでしょうか。そんな中、NHKではネット上のビッグデータを利用して風評がどのように変化してきたのかを特集していましたのでご紹介します。

風評の正体に迫る 東日本大震災・原発事故12年(NHK公式サイト|NHK政治マガジン)
【特集】震災・原発事故12年「風評の正体に迫る」(NHK公式サイト|福島 NEWS WEB) ← 動画で視聴できます。

 ここでは、

  • 「福島の農水産物」がツイッターでどのような言葉と一緒に投稿されたのか
  • 「福島」と関連付けて「桃」「米」「魚」がどのような言葉と一緒に検索されたのか

について調べた結果を簡単にまとめます。

  • 2015年(事故後4年)頃から産地やブランド名、好意的な言葉(「甘い」など)が目立つようになる
     (それまでは「原発」「放射」などが多い)
  • 「桃」は購買につながる言葉と共に検索されることが多くなり、風評の払拭が進んでいる
  • 「米」は懸念につながる言葉と共に検索されることも目立つが、ブランドや品種に関する言葉が増えており、取り組みの効果が出ている
  • 「魚」は処理水についてクローズアップされた時期に「放射能」と共に検索されることが増えた

 桃や米といった農産物に対する風評払拭は前進している傾向にありますが、やはり水産物の風評払拭はこれからの課題ということがわかります。特集の中で説明されていますが、魚の産地は漁獲された海域ではなく水揚げされた港となるそうです。つまり、「福島産」も「○○産」も漁獲された場所は同じ。産地に惑わされることなく、多くの方々に福島産の水産物が購買していただけることを願っています。
(漁獲から流通までの流れが上記リンク先動画の中で詳しく説明されていますのでご参考にされてください。)

 当講座では、2021年に第493回福島医学会学術研究会シンポジウムを企画し、処理水と風評被害について取り上げました。『福島医学会誌』72巻2号(2022年)に抄録として掲載されております。下記リンクよりご覧いただけます。

第493回福島医学会学術研究会シンポジウム抄録
(J-STAGE|福島医学雑誌|72 巻 (2022) 2 号)