O-15 標識ガス PET 定常吸入法簡便定量法についてのご紹介
O-15 標識ガス定常吸入法を用いた PET 検査による脳血流量(CBF)、脳血液量(CBV)、脳酸素摂取率(OEF)、脳酸素消費量(CMRO2)の測定は、慢性閉塞性脳血管障害の病態評価のために重要な検査ですが、動脈採血が必要です。この研究では、O-15 標識ガス定常吸入法による CBF、CBV、OEF、CMRO2の測定における無採血での定量法を開発しました。この定量法では、C15O、15O2、C15O2によるそれぞれの PET 検査の放射能濃度画像上、参照領域と対象領域に関心領域を設定して放射能濃度を求め、参照領域における CBF, CBV, OEF を仮定して、 CBF, CBV, OEF, CMRO2の対象領域/参照領域比(RCBF, RCBV, ROEF, RCMRO2)をエクセルシート上で算出します。
まず、参照部位の CBF、CBV、OEF の値が仮定値と異なった場合の測定誤差をシミュレーションで評価したところ、参照部位の値が±30%変動した場合、RCBF、ROEF 共に±10%以下の測定誤差でした。実測データによる検討では、RCBF、RCBV、ROEF、RCMRO2は動脈採血データを用いて算出した CBF、CBV、OEF、CMRO2 の対象領域/参照領域比との間に病変側、病変対側共に良好な相関を示しました。
この定量法では病態による CBV の変化も考慮に入れた OEF の評価を行っているため、シミュレーションで示されたように閉塞性脳血管障害における misery perfusion でみられるような CBV の増加を伴う OEF の上昇を正確に評価することが理論上可能です。また、実測データにおいても閉塞性脳血管障害での misery perfusion における OEF の上昇や matched hypoperfusion における CMRO2の低下を正確に評価し得ることが示され、閉塞性脳血管障害の病態評価に応用可能と考えられました。
また、この定量法では、RCBF、RCBV、ROEF、RCMRO2 をエクセルシート上で算出しますが、その計算過程で、C15O, 15O2, C15O2による PET 検査時の全血中および血漿中放射能濃度が副次的に計算されます。これらの血液データを PET 装置上で診療に用いられている O-15 標識ガス定常吸入法画像計算用ソフトウェアに入力することにより、RCBF、RCBV、ROEF、RCMRO2 のパラメトリック画像を新たにソフトウェアを用意することなく計算することが可能です。
【参照用添付ファイル】