ミニミニ世界探訪~ベトナム編~
- 講師
- 山品 博子
- やましな ひろこ
- 医療画像評価学、マンモグラフィ、医療社会学、健康教育
1986年ドンモイ政策を契機に
ベトナムは社会主義国でありながら市場経済へと移行し、経済の活性化とともに観光産業も発展しました。首都ハノイをはじめ、ベトナム第2の都市ホーチミン、そして8か所もの世界遺産を有するこの国は、今や世界有数の観光地となっています。
少し歴史をさかのぼると、ベトナム戦争時に使用された枯葉剤による甚大な健康被害を思い浮かべる方も多いでしょう。しかし、枯葉剤に含まれていたダイオキシンと先天異常との因果関係を否定する研究報告も存在します。
研究とは、何がどのように起こったのか、現在はどうなっているのか、そして今後どのような対策が有効なのかといった問いを立て、検証していく営みです。
大学教員は教育だけでなく、研究活動にも日々取り組んでいます。私自身は、乳がん検診に用いられるマンモグラフィに関する研究を主なテーマとしています。ご存じの方もいるかもしれませんが、近年のベトナムでは美容を目的とした医療ツーリズムも盛んに行われています。今回私がベトナムを訪問したのは、豊胸術後の乳がん検診に関する相談を受けたことがきっかけでした。
一口に「豊胸」といっても、シリコンバッグ挿入、脂肪注入、ヒアルロン酸注入など、さまざまな方法があります。このうち、シリコンバッグ挿入を受けた方に対しては、本邦ではマンモグラフィ検査の実施は推奨されていません。
一方、今回相談を受けたベトナムのクリニックでは、豊胸術を受けた方に対しても、可能な限りマンモグラフィ検査を実施することを目指していました。そこで私は、3日間にわたりクリニックに滞在し、検査の流れや撮影手技を見学するとともに、より良いマンモグラフィ検査の提供に向けた指導を行いました。
しかし、異国で指導を行うにはさまざまな壁があることも事実です。文化や風習を理解し、現地の人々と寝食を共にしながら、現状を否定せずに受け入れる姿勢が何よりも大切だと感じています。
入学を希望している皆さん、在校生の皆さん、診療放射線技師としてアジアの医療事情に触れてみたくなったらいつでも声を掛けてください。