医療現場とドラマ&映画撮影現場の共通点
「劇場版ラジエーションハウス」の公開から早1年が経とうとしています。漫画原作から始まりドラマと映画制作にスーパーバイザーとして携わらせていただき多くの貴重な経験をさせていただきました。その中でドラマや映画の撮影現場を見ていて、医療現場に通ずる部分を多く感じました。(写真は劇場版ラジエーションハウス限定試写会にて)
撮影現場にはとても多くの職種の方々が関わっています。プロデューサー、スポンサー、監督、助監督、映像スタッフ、音声スタッフ、照明スタッフ、美術スタッフ、スタイリスト、そして彼らを全般的に支えるアシスタントプロデューサー、さらには私たち医療監修メンバー、他にも多くの職種の方々が関わり1つの作品を作っていきます。ドラマや映画制作の中心になっているのは他でもなく監督です。他のスタッフは監督のイメージする映像を撮り視聴者に届けるために昼夜を問わず惜しみない準備を日々繰り返します。それぞれが独立して専門技術を提供しているなかでそこには見えない強い信頼関係があり、お互いを尊重する姿がありました。そしていずれも相当な体力と気配りを要する職種でどれ一つ欠けても作品は成立しません。
その姿は医療現場に非常に似ていて、学ぶべきことも多いなと現場で仕事を一緒にさせてもらい強く感じました。医療の中心は言うまでもなく医師です。コメディカルと呼ばれる我々診療放射線技師や看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、臨床検査技師、臨床工学技士、管理栄養士、事務員などなどは、医師が目指す治療を行うために縁の下で日々技術と知識を研鑽し患者に正確で適切で安全な医療を届けます。現代医療は多くの職種のスキルを統合させた医療であるため、そこには信頼関係が必要でどれ1つ欠けても患者に適切な医療を届けることはできません。
しかし、その信頼関係というのは一朝一夕で築けるものではありません。長い年月をかけて築かれていくものです。信頼関係を築いていくときに重要なことはなんでしょうか?色々と状況が違えば意見は色々あるでしょうが、1つ共通することは撮影現場に垣間見た「相手(の職種)を尊重する」ことだと思います。お互い意見が合っているときはうまくいっていると感じますが、ひとたび意見が食い違うと離れてしまうのでは信頼関係とは言えません。意見が食い違ったときこそ相手を尊重して「お互い納得できる着地点」を探す努力が双方に必要です。相手の意見を跳ね除けて口を閉じることは簡単です。しかしそこに未来はありません。着地点を探す努力を双方が始めたとき、それは信頼関係を築く大きな一歩を歩んだと言っていいでしょう。撮影現場にはそれがありました。医療や教育現場でもそうありたいですね。
自戒の意を込めて。
