研究の楽しさ、難しさ、面白さ
- 助教
- 松田 将門
- まつだ まさと
- 検査血液学、血栓止血学、臨床検査医学、認知科学
この文章を書いている12月10日は、臨床検査学科の4年生の卒業研究発表会です。臨床検査学科の4年生は、4月~7月上旬まで病院で臨床実習を行い、7月中旬~12月上旬まで卒業研究を行います。卒業研究が終わると、あとは、国家試験勉強です。
卒業研究のテーマや方針は研究室ごとに異なります。私の研究室のテーマは血栓止血学と脳科学であり、方針は「自分で研究を計画し、実験し、解析し、まとめる」です。つまり、私の研究の一部を一緒にやるのではなく、学生が自ら、イチから研究内容を考えるところからスタートします。これは、初めて研究をやる大学生にとって、とても難しいことです。そこで私の研究室ではまず、物の考え方と見方を学ぶために、クリティカルシンキングを勉強するところからスタートします。
今年は、3名の学生と脳波に関する研究を行いました。一言で脳波といっても色々な脳波の成分がありますが、興味深い脳波成分の1つにFmθ(エフエムシータ)があります。これは、ゲームの「テトリス」のような単純な課題をしているときに出現する脳波です。私は以前からFmθに興味があったのですが、自分で本格的に研究したことはなく、そのことを話したところ、学生が興味を持ち今年の卒研テーマとなりました。
Fmθは、すべての人で出現するわけではありません。出現する人としない人がいます。その要因は色々報告されていますが、いまだ明らかではありません。出現する人/しない人にはどんな傾向があり、また、出現しやすい/しにくい環境はあるのか、これらを実験的に調べる計画を立てるところからスタートしました。実験条件を決める時、最初は思うがままにアイディアを挙げ、皆で話し合うのは楽しいですが、過去の論文を読んでいると、すでに自分のアイディアが実験されていたり、論文によって結果が真逆だったりと、研究計画の難しさに直面します。それでも、自分たちの考えと文献検索を基に決めた条件で実験し結果が得られると、達成感があり、何より面白いです。研究における楽しさ、難しさ、面白さ、この一連の流れを経験することが卒業研究の一番の目的だと私は思っています。
臨床現場には研究課題が溢れています。日々の仕事では決まった手順で検査を行いますが、これを単に作業と思ってこなしていると、臨床ならではの研究課題に気づけません。卒業研究での経験が皆さんの研究課題の発見につながり、その研究成果が患者さんの診療に役立つことを期待しています。