韓国原子力医学院(KIRAMS)との第2回国際シンポジウムを開催しました
2025年12月12日、福島県立医科大学(FMU)と韓国原子力医学院(KIRAMS)は、両機関が2025年2月に締結したMOUに基づき、韓国ソウル市のKIRAMSにおいて緊急被ばく医療分野および核医学分野に関する本年2回目となる合同国際シンポジウムを開催しました。本シンポジウムでは、放射性同位体の製造、標的アルファ線治療、ラジオセラノスティクスの臨床応用、規制対応、緊急被ばく・原子力災害医療対策、医療従事者の教育・訓練、リスクコミュニケーション、国際協力を主要テーマとして、活発な議論が行われました。
シンポジウムの開催にあたってKIRAMSのJin Kyung Lee理事長は、「本日の会議は単なる形式的な会合ではありません。私たちが達成したいことについて、率直かつ誠実に話し合う機会なのです。」と熱い期待を述べました。
また、竹之下誠一福島県立医科大学理事長兼学長は、「KIRAMSと福島医大のこのような国際的連携は、研究の加速、専門知識の共有、そして最終的には両国の患者と地域社会にとってより良い成果をもたらすために不可欠です。本日の議論が新たな共同プロジェクトのきっかけとなり、学術的な絆を強化することを心から願っております。」と述べました。
最初に双方の施設の核医学部門に関する取り組みが紹介されました。KIRAMSからは、Kyo Chul Lee博士が、KIRAMSが所有する3基のサイクロトロンを活用した医療用ラジオアイソトープの製造や今後の臨床試験の計画を報告しました。福島医大からは、核医学部門を代表して織内昇特任教授によりAt-211(アスタチン-211)を用いた標的アルファ線治療研究の進展が紹介され実用化への課題についての質疑をもとに今後の展望が議論されました。また、ラジオセラノスティクスの概念に基づく診断・治療一体型アプローチの重要性が強調されました。
続いて、緊急被ばく医療分野については、KIRAMSの緊急被ばく医療センター(National Radiation Emergency Medical Center =略称:NREMC)長であるMinsu Cho博士からNREMCのミッションについて紹介があった後、福島医大の長谷川有史教授(放射線災害医療学講座)より福島第一原子力発電所事故から得られた教訓をもとに福島医大が取り組んでいる緊急被ばく・原子力災害医療の教育と研修訓練の実践について紹介があり、MOUを通じたこれまでの協力関係が双方の活動を有意義なものに作り上げていった過程と昨今の国際情勢を勘案した両機関連携の意義を強調しました。
最後に特別講演として福島医大の山下俊一副学長は「福島原発事故後の健康危機管理(原題:Health Risk Management after the Fukushima Nuclear Power Plant Accident)」と題した講演を行い、福島第一原子力発電所事故後の健康危機管理と県民健康調査事業を通じて、放射線リスクに対する正確な理解と公衆衛生対応の重要性が改めて認識されたことを紹介しました。さらに、福島国際研究教育機構(Fukushima institute for Research, Education and Innovation=略称:F-REI)を拠点に、原子力災害からの復興対応と核医学研究の両面から、将来に向けた人材育成と研究基盤の強化が進行中であることを紹介しました。
本シンポジウムでは、双方の講演および意見交換を通じて互いの強みを理解すると共に、それらを生かすための今後の具体的な実行課題も確認されました。両機関は、At-211を中心とする標的アルファ線治療の持続可能な発展と、緊急被ばく医療分野における国際連携のさらなる強化に向け、今後も緊密に協力していくことで合意しました。
二日目の12月13日には、KIRAMS- NREMC会議室で緊急被ばく医療ネットワーク(World Health Organization-Radiation Emergency Medical Preparedness and Assistance Network=略称:WHO-REMPAN)地域セッションが開催されました。福島医大の菅谷一樹助教(放射線災害医療学講座)が放射線災害医学に係る活動を報告したのち、11名の若い参加者が放射線災害医学・医療および研究開発の観点から、人員不足ではあるものの極めて重要な放射線事故・原子力災害医療分野において、将来の世代をどのように育成し、確保していくかについて、活発かつ率直な意見交換を行いました。Minsu Cho所長は、WHO-REMPANの枠組みの下で、将来の若手候補者のための教育と研鑽のための世界的な交流プログラムの構想案を提案され、今後両機関では課題解決に向けて共同して取組むことで合意しました。
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