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保健医療交流事業 (講演会) レポート

健康長寿を目指して〜家庭でできる生活習慣病予防〜

天栄村・令和5年2月2日(水)

講演の様子1

講演会は、令和5年2月2日(水)14時00分から、天栄村にある天栄村保健センターを会場に定刻どおり開催されました。講師は、腎臓高血圧内科学講座の風間順一郎教授が務められました。

講演は「健康長寿を目指して〜家庭でできる生活習慣病予防〜」をテーマに行われました。

初めに、高血圧は心血管死亡の強大な要因であること、高血圧と糖尿病の合併頻度、糖尿病合併症について説明がなされました。糖尿病合併症の起こり方は「\犠鏃拭廣「境界型」→「E尿病型」の流れがあり、境界型(血糖値が糖尿病型より低いが正常の数値より高い状態)では梗塞(脳梗塞、心筋梗塞)、癌、認知症が始まり、糖尿病型まで移行すると神経症、網膜症、腎症が起こってくると説明されました。

また、高血圧、糖尿病の予防法には下記方法があると説明されました。

予防法1:健診・検診の受診(血圧、HbA1c、空腹時血糖、随時血糖)
予防法2:食事(総摂取カロリーを抑える、外食を減らす、栄養バランスを考える)
予防法3:運動(平日30分、休日60分を目安に、週3回以上)
予防法4:健康管理(こまめに血圧や体重を測る)
予防法5:相談(健診結果だけでなく、日ごろの悩み事を話せる相手を見つける)

一方、先生はここまではタテマエであり、これから話すことが今回天栄村の健康推進員の皆様に聞いて欲しい内容だと話されました。

日本高血圧学会診療ガイドラインが提唱する高血圧患者の生活指導方針では、「減塩目標:6g/日未満」となっているが、これは本当に正しいか?という問題提起から始まり、公衆衛生レベルでの血圧と食塩摂取量の間には正の相関がありそうだが(「食塩を多量に摂取する」→「血圧が上がる」→「心・脳血管障害が増えて早死にする」)、食塩摂取量の多い国と少ない国では平均寿命には違いはないと話されました(日本は現在、食塩摂取量10g/日程度の位置)。

そもそも、「食塩を多量に摂取する」→「血圧が上がる」→「心・脳血管障害が増えて早死にする」→「だから社会全体で食塩摂取を控えるべきである」という理論は演繹的医学推論であり、伝言ゲームのようなもので、「食塩を多量に摂取する」→「だから社会全体で食塩摂取を控えるべきである」は必ずしも正しいものではないと説明されました。実際の臨床的結果(アウトカム)と食塩摂取の関係を調べる必要があるとのことでした。
 尿中Na排泄(≒食塩摂取量)と心血管イベントリスクの関係を調べると、心血管イベントリスクは食塩摂取量11.8g/日を最低とするJ字カーブとなっており、すなわち、一番死亡しにくい食塩摂取量は11.8g/日、 高血圧との関係を加えても、血圧が正常ならJ字カーブはほとんど変化せず、血圧が正常であれば食塩をいくら摂っても心血管障害はほとんど増えないとの結果となると説明されました(心血管障害の中では脳卒中だけリスクが多少増加する)。

先生曰く、「健康を守るためには修行僧のように(特に食の)楽しみを放棄して禁欲的な生活を送る必要があるか?」と問いかけ、医食同源という言葉があり、健康が食事内容に左右されることは事実だが、健康は食事内容だけで決まらないことも事実(吟味が必要)と話されました。
 フレイル(虚弱)という言葉があり、フレイルとは「加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能等)が低下し、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態であるが、一方で適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態像」であり、加齢とともに「健康」→「フレイル」→「寝たきり・要介護」と移行するリスクが高く、日本のフレイル、寝たきり・要介護は今後どんどん増えていくと予測されているとのことでした。
 寝たきり・要介護の前段階のフレイルに陥る原因の1つが、加齢に伴う食欲不振による食事量の低下(慢性的な低栄養)、筋肉量の低下があり、サルコペニア(筋肉が萎えて力を失った状態)になってしまうことが挙げられると説明されました。
 高齢者こそ肉食が必要であり、メタボ対策は65歳まで、65歳を超えたらサルコペニア対策優先で食欲を増進させることが重要だと話されました。そのためには、塩味は食欲の源であり、高齢者が味覚を感知するためには若年層の約4倍の濃度が必要であるため、食塩摂取の過剰な制限は多くの場合、高齢者にはきっと逆効果になると話されました。

先生曰く、「ピンピンコロリ(病気に苦しむことなく、元気に長生きし、最後は寝付かずにコロリと死ぬこと)」という言葉があり、国民の2/3がピンピンコロリを望んでいるとのデータもあるため、必ずしも長生きだけを目指すのではなく、身体的(=肉体的)にも、精神的にも、社会的にも、全てが満たされた状態が大切と話されました。(この考え方をWHOが提案した新しい健康の概念:wellbeingという)。
 ピンピンコロリを望むということはwellbeingを第一の価値観としているということであり、身体的、精神的、社会的に制限を加えると、それ自体がwellbeingではなくなってしまう。肉体的健康のために何かを我慢する、あるいは慣れ親しんできた生活習慣を改めるということは、それだけでwellbeingから離れてしまうと考えることもできるとのこと。
 医療でも行政の保健指導でも、生活指導(主に食生活、運動)など慣れ親しんだライフスタイルへの介入はそれ自体がwellbeingに反する可能性があると話されました。

最後に、「では高血圧・糖尿病対策はどうすれば良いか?」との結論に対して、高血圧も糖尿病も早期のうちは治療しやすくそのための薬もどんどん良くなっている(経口血糖降下薬)。検診を忘れずに受けて、早く病気を見つけて、「早く薬を飲むべき!」と話されました。薬も飲まない、生活も変えない、これは絶対に健康を損なうと述べられ、御講演を終えられました。

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