学生・教職員の方へ

令和4年 理事長 新年あいさつ(2022年1月4日)

みなさん、あけましておめでとうございます。2022年の仕事始めにあたり、ひとことご挨拶を申し上げます。

昨年は震災から10年の節目の年でした。その10年の間に、震災後に描いた多くの構想や戦略が次第に形を成してきました。本学内でも、タンパク質マイクロアレイ技術の確立や、それを利用した新型コロナウイルスの抗体の獲得、さらにはIgA抗体を利用したマスク等衛生用品の開発、アルファ線核種を利用したRI内用療法の進化など、いくつもの先端的で意欲的な研究が成果を挙げ始めています。附属病院もその診療機能をますます充実させています。さらに、復興ニーズに基づいて新設、あるいは再編をした多くの組織が定着し、それぞれに役割を果たしています。
 ここに至る道のりは紆余曲折。多くの苦悩や苦労、困難がありました。しかし、私たちは福島の未来にもたらす新たな医療の姿を共有し、信念を持って構想を練り、新たな戦略を愚直にやり抜いてきました。この場を借りて、改めてこれらの構想に携わってきた全ての皆さんの揺るぎない志を称え、感謝の意を表します。

さて、翻って2022年1月、10年前からの構想が進捗し、狙いが実現しつつある今、私たちは、これまで継続してきたことをさらに発展させ、次のステージに進む新たな構想が必要です。それは私たちが携わるすべての領域について言えることです。 もちろん、10年後20年後を見据えた構想と戦略は一朝一夕に出来るものではありません。10年前に策定した構想や戦略も、実は震災以前から本学の未来、福島の医療の将来を見据えた議論と検討の積み重ねがあったからこそ迅速に立案することができました。私たちは再び、そのような議論を始めなくてはなりません。
 その基盤となるのは、幅広い視野と洞察力です。医療の将来を考える議論は、今や医療問題だけに精通していれば出来る話ではありません。新型コロナウイルス感染症の拡大は、予防や治療と経済格差に強い関係性があることを示しました。エネルギー問題や食糧問題、教育格差や人口爆発、あるいは紛争と質の高い医療の提供といった問題は相互にそして複雑にリンクしているのです。ですから、私たちは課題と解決策を1対1で探るのではなく、社会の動きを俯瞰し複眼的に捉えることが求められます。
 そこで私たちが気を付けなくてはならないことは、本学は医療系の総合大学であり、日常的に人文科学や社会科学に触れる機会がほとんどないということです。だからこそ、意識的に専門外の分野の知識を求め、バランスよく取り入れていくことが重要になります。医療に掛かり切りの私たちが、普段の業務では触れることのない分野の知の探究を実現してこそ、広い視野と深い洞察に満ちた将来設計を可能にするのです。

繰り返しになりますが、今年は、次の10年に何をすべきかを綿密に考える年になります。苦難が多くともやるべきことが明確だったこれまでと比べ、将来を見通そうと熟考することは、より一層、難しく苦しいものです。そして、往々にして手を抜き、楽をしたくなるものです。しかし、今この時期を疎かにすれば、これまで積み上げてきた成果さえ無駄にしてしまいます。自己研鑽を積み、知見を広げ、深く考え、過去にも学ぶ必要があります。だからこそ年の初めにしっかり問題意識と危機感を持って臨んでもらいたいと思います。仕事の質は、考える量に確実に比例することを忘れないでください。
皆さんの、この1年の奮起と奮闘を期待します。

令和4年1月4日
福島県立医科大学理事長兼学長
竹之下 誠一

事務担当 : 総務課 (大学管理係)

電話 024-547-1111(代)/FAX 024-547−1995
Eメール
※スパムメール防止のため一部全角表記しています

▲TOPへ