学生・教職員の方へ

令和5年度 幹部職員向け 訓示(2023年4月3日)

新年度にあたり、ひとことご挨拶申し上げます。

このたび、3期目の理事長職を拝命しました。幹部職員の皆さんには改めてよろしくお願いいたします。そして、震災以降、復興に向けた困難な道を、愚直に、ひたむきに切り拓いてきた教職員の皆さん、これまでご尽力いただいた本学に関係した全ての方に最大の敬意を表します。

さて、私たちは、12年間にわたる新たな再生と復興のプロセスの中で、成功事例にはより大きな成果を求め、失敗の場合は、それを糧に新たなチャレンジを試みるという、試行錯誤を繰り返してきました。その過程で、教育では、保健科学部の開設や助産師養成コースの新設などにより、多彩な医療人の育成が可能になりました。復興の要である医療の充実は、何よりも人材の充実から始まるものであり、そのための基盤を整えることが出来たといえるでしょう。
 研究面も、福島国際研究教育機構の2つの分野、「放射線科学・創薬医療、放射線の産業利用」分野と「原子力災害に関するデータや知見の集積・発信」の分野で本学は積極的に関与することとなります。
 これまでの本学で取組んできた、サイクロトロンを活用したRI医薬品の研究や、県民健康調査で得られた知見などを国内、世界と共有し、今後、新たな知見や医薬品を生み出すプロセスに入ってきました。

このように12年を経て、本学ではようやく復興のためのプラットフォームができつつあります。そして、今後はいよいよこのプラットフォームの上で、復興に向けた取り組みを具体的に目に見える形にする新しいフェーズへと進むことになります。当然私たちの意識も変わっていかなくてはなりません。

私は理事長就任当初、前例のない事態に直面し正解が見えない中では、画一的な判断はせず、ケースバイケースでしなやかな対応をすべきである、として「レジリエンス」というキーワードをしきりに皆さんに示し続けました。さらに就任2期目には、しなやかな対応力を身に着けた個人や組織同士が連携して、発揮できる力を倍増させることを狙いとして、連携、すなわち「アライアンス」を次のキーワードとして示しました。加えて、せっかく生み出した課題解決策を一過性のものに終わらせず、システムとして継続させるため、「変化を進化へ」というスローガンも掲げてきたのです。
 そして、今後始まる新しいフェーズでは、これらの意識は維持しつつ、もう一つ、機敏さや俊敏性、すなわち「アジリティ」という意識が必要不可欠になると考えています。
 これまでの12年間は世界情勢を含めても同じですが、福島県や本学に生じた変化は、あまりにも大きく、誰もが戸惑うことも多かったと思います。
 しかし、これからはさらにその変化が加速するはずです。しかも、その変化に関与する組織が学内や県内だけでなく、国や他大学、他国の機関など広く多様化するうえに、一つ一つの取組みが個別細分化し、専門化していきます。
 そして、それらの取組みは常に連携していかなければならないという課題まで加わるのです。この非常に困難なミッションを完遂するにあたり、私自身も含めて、一人一人が常に問題意識を持ち、情報に対する感度を高くし、「機(き)を見る(みる)に敏(びん)」、つまり、チャンスを逃さず、的確な判断を下し行動する、アジリティという意識が不可欠なのです。ただ、大切なことはスピードだけが重要だと勘違いしないことです。
 なにより「レジリエンス」と「アライアンス」を忘れないこと、これらの二つの意識の上に「アジリティ」という行動原則を加えるということが大切です。単にアジリティだけを意識してしまうと、他の取組みから浮いてしまったり、取組みの本来の目的を見失ってしまいかねません。
 「レジリエンス・アライアンス・アジリティ」を三位一体として意識し、これからの新しい復興のフェーズに立ち向かっていきたいと思います。

これから進む道も、これまで来た道と同様、道しるべはなく、自ら道を切り拓いていくことの方が多いものと思います。決して楽な道のりではないでしょう。
 しかし、本学の取組みは、福島県の未来そのものです。もちろん、変化や進化には失敗がつきものですが、私たちは常に失敗を成功への材料と捉え、失敗を大切な価値としてきました。
 失敗をきちんと検証する、いわば反省力を持った実践家として、そして、繰り返しチャレンジする勇気を持った実務家として、皆さんと共に未来を構築していきましょう。

公立大学法人福島県立医科大学
理事長兼学長 竹之下誠一

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