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福島県立医科大学 トピックス

肺がん検診におけるAI実用化に向けた共同研究を開始
胸部X線検査にAIを活用し、肺がん検診の質向上やスピードの維持を目指す

令和元年7月29日(月)

令和元年7月より、公立大学法人 福島県立医科大学(理事長:竹之下 誠一)は、みずほ情報総研株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:向井 康眞)と共同研究契約を締結し、肺がん検診における胸部X線検査画像の読影支援AIの実用化を目指すこととなりました。本研究は、肺がん検診において広く利用されている胸部X線検査にAIを活用する点に大きな意義があり、肺がん検診の有効性の向上と受診率の向上につなげてまいります。

1.研 究 者

公立大学法人福島県立医科大学 医学部 呼吸器外科学講座 主任教授 鈴木 弘行
公立大学法人福島県立医科大学 会津医療センター外科学講座 准教授 樋口 光徳 他
みずほ情報総研株式会社 社会政策コンサルティング部・情報通信研究部

2.研 究 名

肺がん検診におけるAI(人工知能)実用化に向けた研究

3.研究概要

今回の共同研究では、集団健診による胸部X線検査画像の読影に関する高精度のAIを共同開発し、肺がん検診業務へのAIの活用を目指します。CTやMRIと比べて安価で広く普及し利用されている胸部X線検査にAIを活用することに大きな意義があります。
さらに、この共同研究では以下のような効果が期待されます。

  1. 一次読影の際にAIの判断を参考に医師が診断を行うことで、医師の負担軽減、医師の労働時間の短縮を図る。
  2. 陰影の丁寧かつ迅速な確認を図るとともに、一次読影後に異常所見の疑いがあった検査画像を複数の医師で合同判定する業務に医師の比重をシフトすることで、肺がん検診の質向上を実現する。
  3. 物理的な距離にとらわれずに、遠隔での肺がん検診業務支援を行うことも検討し、専門性の高い読影医が不足する地方部における肺がん検診格差の解消を実現する。

肺がん検診におけるAIの有用性を福島県発の業績として世界へ発信し、他地域での活用も促すことで、我が国の肺がんの早期発見および治療の一助になり得るものと考えています。

4.研究協力の内容と想定する工程

今回の共同研究契約の締結により、今後、両者は以下の点について協力を行います。

  1. 肺がん検診データの収集
  2. 読影支援用AIの開発
  3. 読影支援用AIの精度評価、並びに医師の負担軽減効果の測定

今後、工程を3段階に分けて本研究を進めてまいります。

工程1:2019年7月
共同研究を開始。9月より胸部X線検査画像の読影に関する高精度のAIのプロトタイプを開発
工程2:2020年以降
遠隔での肺がん検診業務支援に係る実証事業を開始
工程3:2021年以降
AI読影支援サービスの開始

【概念図】

【概念図】

■お問い合わせ先

○研究内容に関すること
福島県立医科大学 会津医療センター 外科学講座 准教授 樋口 光徳
電話(024)275-2100(代表)/FAX(024)275-2568
○広報に関すること福島県立医科大学
広報コミュニケーション室 松井・日野 電話(024)547-1016

※参考 本研究の背景

肺がんは世界的規模で増加傾向にある疾患で死亡率も高く、その治療のための取り組みは我が国のみならず、全世界の喫緊の課題となっています。肺がんは早期の段階では自覚症状を伴わないために発見が遅れることが多い一方で、その治療には早期発見が重要であり、集団健診で実施する胸部X線検査は大きな意義を持ちます。

しかし、検査画像から診療上の所見を得る読影作業を僅かな医師で大量にこなす負担は決して軽いものではありません。福島県では、肺がん検診を受診した年間約20万人分の読影を委託された医師が行なっていますが、呼吸器を専門とする医師は少なく、多い医師では年間4,000例以上の読影をこなすなど、専門医の負担が大きくなっております。地域によっては読影する医師が不在している問題もあります。また、日常診療を行いながらの長時間にわたる読影作業は、作業効率の低下や陰影の見過ごしなどの懸念から、医療安全管理上も課題とされています。

日本におけるがん推定罹患数と死亡率
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