日本プライマリ・ケア連合学会学術誌「Journal of General and Family Medicine」掲載(2025年11月)
The Effect of Three Key Administrative Errors on Patient Trust in Physicians: Prescription Errors, Confidentiality Breaches, and Appointment Scheduling Omissions
処方・機密保持・外来予約におけるエラーが主治医と医師全般への信頼に与える影響:横断研究
會田 哲朗(あいた・てつろう)
大学院医学研究科臨床疫学分野 博士研究員
研究グループ
會田哲朗(福島県立医科大学大学院医学研究科臨床疫学分野/総合内科・総合診療学講座/総合内科・総合診療医センター)、宮脇義亜(岡山大学)、片山祐(岡山大学)、櫻井康亮(昭和医科大学)、小黒奈緒(昭和医科大学)、脇田貴文(関西大学)、矢嶋宣幸(昭和医科大学)、Ashwin Gupta(ミシガン大学)、栗田宜明(福島県立医科大学大学院医学研究科臨床疫学分野)
概要
論文掲載雑誌:「Journal of General and Family Medicine」(2025年11月30日)
患者が医師に寄せる信頼は、診療の根幹を支える要素であり、服薬や通院の継続にも大きな影響を及ぼします。しかし、診療プロセスにおいて発生しうる処方エラー、機密保持違反、外来予約エラーが患者の医師への信頼にどの程度影響するかについてはこれまで十分に検討されていませんでした。
本研究では、質問紙調査を用いて、これらのエラーが主治医への信頼および医師全般への信頼に与える影響を調査し、クラスターロバスト分散を用いた重回帰分析で解析しました。さらに、エラーと「医師全般への信頼低下」との関連が「主治医への信頼低下」を介して生じるのかを媒介分析によって検討しました。
その結果、約14%の患者が少なくとも一種類のエラーを経験していました。特に処方エラーの経験は、主治医への信頼低下のみならず医師全般への信頼低下とも有意に関連していました。主治医への信頼低下の程度は、先行研究で報告されている「誤診経験による主治医への信頼低下」と同程度でした。一方、機密保持違反および外来予約エラーの経験は、主治医への信頼低下のみと関連していました。媒介分析では、処方エラーが医師全般への信頼低下に及ぼす影響の31%が、主治医への信頼低下によって媒介されていました。
日本の外来診療では、電子カルテなどのシステムを用いた処方・予約操作が日常的に求められ、また診察室の構造上、隣室との間から会話が漏れるなど、医療者の意図しない形で機密保持に支障が生じる可能性も指摘されています。本研究は、こうした診療プロセス上のエラーが、患者医師関係の維持において看過できない影響を及ぼすことを示しました。
特に処方エラーは、主治医に対する信頼のみならず医師全般への信頼を損なう可能性があり、公衆衛生的にも重要な課題です。日常診療においては、これらのエラーを可能な限り防止し、患者との良好な信頼関係を維持するための継続的な取り組みが求められます。(會田 哲朗)
連絡先
公立大学法人福島県立医科大学 医学部 総合内科・総合診療学講座/総合内科・総合診療医センター/大学院医学研究科臨床疫学分野
電話:024-547-1515
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講座ホームページ:
総合内科・総合診療学講座 https://www.fmu.ac.jp/education/medicine/department/gim-fm/
総合内科・総合診療医センター https://www.fmu.ac.jp/home/fcgp/
臨床疫学分野 https://noriaki-kurita.jp/
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