米国学術誌「American Journal of Respiratory Cell and Molecular Biology」掲載(2025年9月)

Targeting CSF1R attenuates the development of pulmonary arterial hypertension through CCL2

CSF1Rを対象とした治療がCCL2を介して肺動脈性肺高血圧症の進行を抑制する

福島県立医科大学の腫瘍内科学講座主任教授、佐治重衡氏のポートレート。白衣を着用し、背景には書類や小物が並ぶ。

西浦 司人(にしうら・かずと)

循環器内科学講座 大学院生

研究グループ

(福島県立医科大学 循環器内科学講座)西浦司人、横川哲朗、市村祥平、三浦俊輔

佐藤彰彦、清水竹史、三阪智史、及川雅啓、義久精臣、杉本浩一、中里和彦、石田隆史

竹石恭知

(福島県立医科大学 呼吸器外科学講座)武藤哲史、鈴木弘行

(福島県立医科大学 輸血・移植免疫学講座)植田航希、池田和彦

 

 

概要

論文掲載雑誌:「American Journal of Respiratory Cell and Molecular Biology」 (2025年9月23日)


肺動脈性肺高血圧症の病態には、肺動脈平滑筋細胞の異常増殖や肺動脈周囲マクロファージが重要な役割を演じている。

本研究では、マクロファージの分化・増殖を制御するColony stimulating factor 1 receptor(CSF1R)に着目し、CSF1Rの肺動脈性肺高血圧症での意義を検討した。

肺高血圧症患者の肺組織では、マクロファージやCSF1R陽性細胞が有意に多く浸潤していた。肺高血圧症モデルマウスにおいてアンチセンス核酸医薬を用いて肺のCsf1rをノックダウンすると肺動脈周囲CD68陽性マクロファージ、M2マクロファージの数が減少し、肺高血圧が改善した。CSF1R阻害薬の投与においても、同様に肺高血圧症モデル動物の肺高血圧が改善した。

さらに、肺動脈性肺高血圧症の発症メカニズム解明のため、C-C motif chemokine ligand 2 (CCL2) に着目した。肺由来M2マクロファージの培養上清で、肺動脈平滑筋細胞を培養すると増殖能が亢進し、CCL2中和抗体を加えた培養では増殖能が抑制された。

これらの結果から、M2マクロファージ由来のCCL2が、肺動脈リモデリング悪化に関与することが明らかとなった。

以上より、CSF1RとM2マクロファージがCCL2を介して肺高血圧症の病態を進行させていることが明らかとなり、CSF1Rが新たな治療標的となる可能性が示唆された。(西浦 司人)

 

連絡先

公立大学法人福島県立医科大学 循環器内科学講座

電話:024-547-1190

FAX:024-548-1821
講座ホームページ:https://www.fmu.ac.jp/education/medicine/department/cardiovascular/

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