英国医学誌「Journal of global health」掲載(2025年6月)

Necessity of long-term support after disasters: lessons from disaster-related death criteria after the Fukushima nuclear disaster

災害後の長期的支援の必要性:福島第一原子力発電所事故に伴う複合災害後の災害関連死認定基準からの教訓

福島県立医科大学の腫瘍内科学講座主任教授、佐治重衡氏のポートレート。白衣を着用し、背景には書類や小物が並ぶ。

山本 知佳(やまもと・ちか)

放射線健康管理学講座 助手

研究グループ

山本知佳、澤野豊明、野中沙織、内悠奈、川島萌、坪倉正治

概要

論文掲載雑誌:「Journal of global health」 (2025年6月13日)


1. 災害の頻度と複雑性が増す中で、医療の中断、環境の変化、長期避難、心理社会的ストレスといった間接的影響が、重要な公衆衛生課題として広く認識されるようになってきています。日本においては、災害関連死という制度的枠組みが、こうした二次的健康被害に対応する役割を果たしています。

2. 本稿では、長岡基準と南相馬基準という2つの災害関連死認定制度を比較を行いました。長岡基準は、災害から6か月を超える死亡例を原則除外する時間基準を採用しています。一方、福島原発事故の文脈から生まれた南相馬基準は、個別事情に即した柔軟な判断を特徴とし、長期的かつ間接的な健康悪化も災害関連死として認定しうる制度となっています。

3. この対照的なアプローチは、長期避難や慢性疾患の進行といった災害後の現実を反映した柔軟な認定基準の重要性を示しています。災害関連死データを活用することで、二次的健康影響に対して最も脆弱な集団を特定し、その知見を防災計画や保健医療政策に反映につながります。

4. 仙台防災枠組が掲げる「Build Back Better(より良い復興)」の理念のもと、災害関連死認定制度に長期的影響を包含する形へと見直すことは、予防可能な災害関連死の削減と、複合災害後の医療・福祉政策の強化に不可欠であると考えます。

(山本 知佳)

 

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