米国科学誌「Journal of Medicinal Chemistry」掲載(2025年1月オンライン)
In Vivo Stability Improvement of Astatobenzene Derivatives by Introducing Neighboring Substituents
隣接置換基の導入による211At標識芳香族化合物の生体内安定性の向上

鷲山 幸信(わしやま・こうしん)
先端臨床研究センター 准教授

髙橋 和弘(たかはし・かずひろ)
先端臨床研究センター 教授
研究グループ
平田咲,三代憲司,鷲山幸信,宗兼将之,淵上剛志,荒野泰,高橋和弘,絹谷清剛,小川数馬
概要
論文掲載雑誌:「Journal of Medicinal Chemistry」 (2025年1月5日)
金沢大学新学術創成研究機構の小川数馬教授,三代憲司准教授,医薬保健学総合研究科薬学専攻/次世代精鋭人材創発プロジェクト令和4年度採用選抜学生/日本学術振興会特別研究員(DC1)の平田咲(博士課程2年),医薬保健研究域薬学系の淵上剛志准教授,宗兼将之助教,附属病院核医学診療科の絹谷清剛教授,福島県立医科大学の高橋和弘教授,鷲山幸信准教授,千葉大学の荒野泰名誉教授らの共同研究グループは,生体内において芳香環上のアスタチン-211 ( 211 At) を安定に保持する新規標識部位の開発を行いました。
α線は非常に高い細胞傷害性を持ち,その飛程が短いことから,α線放出核種をもつ薬剤をがん細胞にのみ届けることで,副作用を抑えながら高い治療効果を得ることができます。特に 211 Atは,国内で製造が可能なほぼ唯一のα線放出核種であり,近年その医療応用が注目されています。これまでの研究では,芳香環上に 211 Atを導入した薬剤が多く検討されてきましたが,芳香環上の 211 Atは生体における安定性が低く,薬剤構造から 211 Atが脱離することにより正常組織に意図せず集積することが課題となっていました。本研究では,芳香環上の 211 At周辺の構造修飾により, 211 Atの脱離を抑制する技術を開発しました。異なる性質をもつ種々の置換基を導入した構造を検討した結果, 211 Atを生体内で安定に保持できる標識技術の確立に成功しました。この技術は,より効果的で副作用の少ない核医学治療の実現につながることが期待されます。(鷲山 幸信)
連絡先
- 公立大学法人福島県立医科大学
- 先端臨床研究センター 准教授 鷲山幸信
- 電話:(大学代表024-581-5177)
- 先端臨床研究センターホームページ: https://www.fmu.ac.jp/home/acrc/
- メールアドレス: kwashi@fmu.ac.jp(スパムメール防止のため一部全角表記しています)