イタリア学術誌「Journal of Experimental & Clinical Cancer Research」掲載(令和3年10月8日)

Alloantigen-activated (AAA) CD4+ T cells reinvigorate host endogenous T cell immunity to eliminate pre-established tumors in mice

同種反応性活性化CD4陽性T細胞は担癌宿主の抗腫瘍T細胞免疫を蘇らせ腫瘍を退縮させる

望月 一弘

望月 一弘(もちづき・かずひろ)

小児腫瘍内科 講師

研究グループ

望月一弘1、小林正悟1、高橋信久1、杉本幸太郎2、大原喜裕1、佐野秀樹1、峯石真3、Yi Zhang4、菊田敦11:福島県立医科大学 小児腫瘍内科、2:福島県立医科大学 基礎病理学講座、3: Department of Medicine, Penn State Hershey Medical Center、4:Department of Cancer and Cellular Biology, Temple University

概要

論文掲載雑誌「Journal of Experimental & Clinical Cancer Research」(令和3年10月8日)

がんを制圧しつつ永続的な再発を防ぐには宿主自身の強力な抗腫瘍免疫を誘導するのが理想的ですが、これまでの自己の免疫システムに依拠したがんワクチン療法の有効性は極めて限定的でした。今回我々は、担癌宿主の樹状細胞を用いて、担癌宿主の同種抗原に反応性に活性化した同種CD4陽性( A llo a ntigen a ctivated CD4 + :AAA-CD4 + )T細胞を、担癌マウスの腫瘍内に投与することにより、腫瘍局所での強力なTh1炎症により宿主の免疫関連細胞が腫瘍内に浸潤し、最終的に宿主の腫瘍特異的な細胞傷害性T細胞(Cytotoxic T-lymphocytes:CTLs)が誘導され、腫瘍が完全退縮し宿主マウスが長期生存することを見出しました。誘導されたCTLsは長期的に再発を抑制し、また、直接治療していない遠隔病変に対する抗腫瘍効果も示しました。尚、投与したAAA-CD4 + T細胞は腫瘍局所にて炎症反応を惹起した後に宿主免疫により速やかに排除されるため、移植片対宿主病などの有害反応は認めませんでした。今回、我々が報告したAAA-CD4 + T細胞療法は、腫瘍局所での強力な同種免疫反応を起点として宿主CTLsを誘導するこれまでにない画期的ながんワクチン療法です。本療法は様々な難治性固形がんへの応用が可能であり、既存療法との相乗効果も見込まれることから、悪性腫瘍全体の予後の改善に大きく貢献するものと期待されます。

連絡先

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