英国科学誌「Journal of Psychopharmacology」(令和3年7月30日掲載)

Effects of benzodiazepine and orexin receptor antagonist on cognitive function revealed by auditory event-related potentials

聴覚事象関連電位に反映されるベンゾジアゼピンおよびオレキシン受容体拮抗薬による認知機能への影響

医療白衣を着た志賀哲也准教授のポートレート。背景はシンプルな白。

志賀 哲也(しが・てつや)

医学部 神経精神医学講座・会津医療センター 精神医学講座 准教授

研究グループ

志賀哲也、星野大、落合晴香、刑部有祐、菅野和子、堀越翔、三浦至、矢部博興(福島県立医科大学 医学部 神経精神医学講座)

概要

論文掲載雑誌「Journal of Psychopharmacology」(令和3年7月30日)

ベンゾジアゼピン系睡眠薬の内服による認知機能の低下は重大な副作用と考えられています。近年になってオレキシン受容体拮抗薬という忍容性が高く、副作用の比較的少ない薬剤も開発されるようになってきました。

本研究の目的はベンゾジアゼピン系睡眠薬およびオレキシン受容体拮抗薬の内服翌日の認知機能に与える影響を、ミスマッチ陰性電位(MMN)とP300という聴覚事象関連電位で推定することが目的です。

60名の健常者がロルメタゼパム(ベンゾジアゼピン系睡眠薬)群、スボレキサント(オレキシン受容体拮抗薬)群、プラセボ群の3群に二重盲検で無作為に割り付けられ、これらの薬剤を内服した翌日の認知機能についてMMN、P300および、記憶や注意機能などを反映するDSST(digit symbol substitution test)と呼ばれる心理検査で評価されました。

結果、ベンゾジアゼピン系睡眠薬を内服した群では、他の2群と比較してMMNが有意に減衰していました。一方で、P300とDSST得点においては、3群間に有意差は認められませんでした。

これらの結果は、MMNがベンゾジアゼピン系睡眠薬による認知機能への影響を鋭敏に反映するツールであることを示すとともに、オレキシン受容体拮抗薬がこの機能に影響を及ぼしにくい薬剤であることを示しています。

連絡先

ページの先頭へ戻る