欧州科学雑誌「EJNMMI Physics」(2020年9月号)
Human dosimetry of free 211 At and meta-[ 211 At]astatobenzylguanidine ( 211 At-MABG) estimated using preclinical biodistribution from normal mice
正常マウスにおけるフリー 211 Atおよびmeta-[ 211 At]astatobenzylguanidine (MABG)の生体内分布を用いたヒト組織吸収線量評価

右近 直之(うこん・なおゆき)
ふくしま国際医療科学センター 先端臨床研究センター 助教
研究グループ
右近 直之, 趙 松吉, 鷲山 幸信, 織内 昇, 粟生木 美穂, 譚 成博, 下山 彩希, 髙橋 和弘・先端臨床研究センター久保 均・新医療系学部設置準備室伊藤 浩・放射線医学講座
概要
論文掲載雑誌:「EJNMMI Physics」 (2020年9月号)
悪性褐色細胞腫(がん)に対するアルファ線を放出する治療薬候補の生体内分布(薬剤が体内臓器にどの程度集積するか)を、マウスを用いた動物実験で評価し、ヒトへ外挿することで正常組織の吸収線量を推定して臨床応用の際の副作用が予測可能かを検証しました。
悪性褐色細胞腫は副腎髄質に発生する腫瘍で、従来からベータ線放出核種である 131 Iを用いた 131 I-MIBGによる治療が行われています。福島県立医科大学では、がん細胞を殺傷する能力が高いアルファ線を放出する核種アスタチン211( 211 At)を結合させた薬剤 211 At-MABGの開発を行っており、この新しい治療薬候補を早く患者さんに届けるために、臨床試験の実施に向け取り組んでいます。
しかし、アルファ線治療の臨床利用の歴史はまだ浅く、従来のベータ線治療薬とは異なる予想外の副作用が懸念されます。そこで、 211 At-MABGの生体内分布評価を動物実験で評価し、その分布をヒトへと外挿することで人体の正常臓器への吸収線量を推定しました。これにより、患者さんに適切な治療薬の投与量を決定することで、副作用の発生を防ぎ安全な治療が可能となります。
この研究の成果は、新しい治療法として海外でも注目を集め、本学が研究を進めている 211 Atによるがん治療の開発につながる成果です。
本成果により、臨床試験開始に向け一歩前進することができました。今回の知見を活かし、臨床試験をできるだけ早く実現するために、準備を進めて参ります。
本研究は、科学研究費助成事業 若手研究(18K15556)および革新的がん医療実用化研究事業 (AMED) (JP20ck0106414) などの研究助成により実施したものです。
連絡先
- 公立大学法人福島県立医科大学 先端臨床研究センター
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