国際老年学・老年医学誌「Geriatrics & Gerontology International」掲載(2020年6月)

Associations of combinations of housing tenure status and household structure with subjective happiness among community-dwelling elderly people: A cross-sectional study with stratified random sampling.

地域居住高齢者の主観的幸福感と、住居保有状況および世帯構成の組み合わせとの関連性:層化無作為抽出法を用いた断面研究

福島県立医科大学の講師、日高友郎氏が書籍の背後で微笑んでいるポートレート。

日高 友郎(ひだか・ともお)

医学部 衛生学・予防医学講座 講師

研究グループ

日高友郎・遠藤翔太・春日秀朗・増石有佑・各務竹康・阿部孝一・福島哲仁

概要

論文掲載雑誌:「Geriatrics & Gerontology International」 (2020年6月掲載)

地域高齢者が日々を幸せに暮らしていくためには、居住条件の充実が不可欠です。これまでの研究では、住居保有状況(持ち家か、賃貸か)ならびに世帯構成(家族同居か、独居か)が、高齢者の幸福感に影響する要因であると指摘されてきました。しかし、住居保有状況と世帯構成とを組み合わせて、幸福感との関連性を検証した研究は過去にありません。特定の条件が組み合わさった場合―たとえば、「賃貸かつ独居」―には、特に不幸せな印象を持ってしまいますが、大きな影響が生じる可能性もあります。

本研究では、郡山市に居住する一般高齢者を対象に、主観的幸福感と、住居保有状況と世帯構成との関連性を調査しました。分析では、「持ち家かつ家族同居」を基準として、「持ち家かつ独居」、「賃貸かつ家族同居」、「賃貸かつ独居」との間で幸福感にどの程度の差があるのかを比較しました。その結果、「世帯構成にかかわらず、住まいが賃貸の場合には、持ち家の人と比べて、幸福感が低い」ことがわかりました。

住まいが賃貸である、つまり「永続的な住まいを持っていない」状態であることが、高齢者の幸福感を低めてしまう決定因の一つであることが明らかになりました。特に賃貸住まいの高齢者世帯は、「もし立ち退きさせられた場合、次の住まいを見つけることが難しい」という状況にあるケースが多いため、住まいの不安定さから精神的な不安を強く感じており、そのために幸福感が低い可能性があります。

高齢者をめぐる居住の問題は、社会問題としても、たびたび報じられています。本研究を共同で実施した福島県郡山市とも連携し、対策を検討してまいります。

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