スイス雑誌「Cells」掲載(2020年3月14日掲載)

Ets Family Transcription Factor Fli-1 Promotes Leukocyte Recruitment and Production of IL-17A in the MRL/Lpr Mouse Model of Lupus Nephritis

Etsファミリー転写因子Fli-1はループスモデルマウスであるMRL/lprマウスの腎炎におけるIL-17産生及び白血球浸潤を亢進させる

医学部の講師、佐藤秀三氏がスーツを着て微笑んでいるポートレート。背景は無地のグレー。

佐藤 秀三(さとう・しゅうぞう)

医学部 リウマチ膠原病内科学講座 講師

研究グループ

佐藤秀三・XK Zhang・天目純平・藤田雄也・松岡直紀・古谷牧子・浅野智之・小林浩子・渡辺浩志・右田清志

概要

論文掲載雑誌:「Cells」 (2020年3月14日)

全身性エリテマトーデス(SLE) は若年女性に好発する、原因不明の全身性自己免疫疾患です。ループス腎炎はSLEの生命予後を規定する臓器病変でSLE患者の約半数に合併しますが、未だその難治例の克服が課題となっています。著者らは、SLEで転写因子「Fli-1 (Friend leukemia virus integration 1)」の発現が亢進していること、さらにはループスモデルマウスでのFli-1発現抑制により腎炎が劇的に改善することを報告しました。また、ループス腎炎の進展にはサイトカインやケモカインの異常産生が重要な役割を果たすことが知られ、これまで著者らの実験から、Fli-1が種々のサイトカイン(IL-6、G-CSF)やケモカイン(CCL2、CCL5、CXCL2等)の発現を制御することでループス腎炎の病態に関与することが分かってきました。ループス腎炎ではサイトカインであるIL-17が腎炎の維持・進展に重要な役割を果たしていますが、Fli-1がそこに関連しているかについては不明でした。今回我々はループスモデルマウスのMRL/lprマウス(野生型)及びFli-1ヘテロ(Fli-1 +/- )MRL/lprマウス(Fli-1発現が半減している)を用いて、IL-17の発現や腎での炎症細胞浸潤への影響を解析し、Fli-1がIL-17発現に実際に関与しているか検討しました。その結果、血中IL-17濃度は野生型よりFli-1 +/- MRL/lprマウスがやや低い傾向で、腎組織でのIL-17発現はFli-1 +/- マウスで有意に減少していました。また、腎の間質における白血球浸潤においてIL-17陽性細胞が有意にFli-1 +/- MRL/lprマウスで減少していました。腎組織の蛍光免疫染色では、CD3陽性/IL-17陽性細胞及びTh17細胞(CD4陽性/IL-17陽性)数が有意にFli-1 +/- MRL/lprマウスで減少していました。原因としては、Th17細胞を遊走させるCCL20陽性単核球数が有意にFli-1 +/- MRL/lprマウスで減少しており、Fli-1発現低下によりこれらの細胞浸潤が抑制され、IL-17発現及び炎症細胞浸潤の減少を惹起している可能性が示唆されました。この様に、Fli-1がループス腎炎におけるIL-17発現や炎症細胞浸潤を制御しループス腎炎に影響を与えている可能性が示唆され、今まで知られていなかった新たなメカニズムが判明しました。

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