米国雑誌「Journal of the American Heart Association」掲載(2020年4月)

Associations of benzodiazepine with adverse prognosis in heart failure patients with insomnia

不眠症を合併した心不全患者におけるベンゾジアゼピンと予後との関連

福島県立医科大学の循環器内科学講座の専攻医、佐藤悠氏の公式写真。

佐藤 悠(さとう・ゆう)

医学部 循環器内科学講座 専攻医

研究グループ

佐藤 悠、義久 精臣、寶槻 優、渡邊 孝一郎、君島 勇輔、喜古 崇豊、菅野 優紀、横川 哲朗、阿部 諭史、三阪 智史、佐藤 崇匡、及川 雅啓、小林 淳、八巻 尚洋、国井 浩行、中里 和彦、石田 隆史、竹石 恭知

概要

論文掲載雑誌:「Journal of the American Heart Association」 (2020年4月)

不眠症は心不全患者の不良な予後と関連していることが報告されています。不眠症の治療に使用されるベンゾジアゼピン(BZ)は、γ-aminobutyric acid type A (GABAA)受容体のBZ部位に作用することで睡眠、抗不安、抗痙攣、筋弛緩などの効果を発揮しますが、依存、耐性や転倒などのリスクが報告されています。一方Z薬と呼ばれる睡眠薬(ゾルピデム、ゾピクロン、Sゾピクロン)もGABAA受容体のBZ部位に作用しますが、BZよりも比較的安全であるとされています。しかしながら、心不全患者の予後と睡眠薬の種類の関係は明らかではありませんでした。

我々は、BZかZ薬のいずれかで不眠症に対する治療を受けていた心不全入院患者826名の予後について解析を行いました。患者群を睡眠薬の種類により2群(BZ群488名、Z群338名)に分け、退院後の予後を比較検討しました。主要評価項目は、心不全再入院または心臓死としました。BZ群はZ群に比べより高齢でうつ病の合併が高率でした。カプランマイヤー解析では、BZ群において心不全再入院および心臓死の発生が有意に高率でした。多変量コックス比例ハザード解析では、BZの服薬は心不全再入院の独立した予測因子でした。睡眠薬の選択に関係すると考えらえる因子で調整したプロペンシティスコアでマッチング後も、BZ群では心不全再入院が高率でした。

以上から、不眠症を合併した心不全患者において、BZの使用はZ薬と比して心不全再入院の高いリスクと関連していることが示唆されました。

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