米国科学誌「Molecular Cancer Research」掲載(平成30年6月)
β4-Integrin/PI3K Signaling Promotes Tumor Progression through the Galectin-3–N-Glycan Complex
癌の悪性化における糖鎖の役割を解明

苅谷 慶喜(かりや・よしのぶ)
医学部 生化学講座 准教授
研究グループ
Yukiko Kariya, Midori Oyama, Yasuhiro Hashimoto, Jianguo Gu, and Yoshinobu Kariya
概要
論文掲載雑誌:「Molecular Cancer Research」 (June, 2018)
私たちの体を構成しているタンパク質の多くは、糖が鎖状につながった“糖鎖”を付加しています。それら糖鎖は細胞が癌化すると正常時とは異なる型に変化することから、癌を検出する際の腫瘍マーカーとして診断に用いられています。しかしながら、癌型糖鎖のタンパク質への付加が、癌の悪性化にどのような影響を与えているかについては、実はあまりわかっていません。
本研究では、癌型糖鎖の一種であるβ1,6GlcNAc糖鎖のβ4インテグリンへの付加が、癌の悪性化を促進することを明らかにしました(図1)。この糖鎖にはガレクチン3という別なタンパク質が結合します。ガレクチン3がβ1,6GlcNAc糖鎖間を架橋することで、β4インテグリンを寄せ集め、PI3K/Aktという細胞内シグナルの活性化を誘導しました。そのシグナルにより癌細胞の機能が亢進され、癌の悪性化が促進されることが明らかとなりました。
以上の結果は、β4インテグリン上のβ1,6GlcNAc糖鎖が、癌の悪性化において重要な役割を果たしていることを示すとともに、癌治療薬のターゲットになる可能性を示唆しています。今後、この研究成果をもとに、新たな癌治療薬が生まれることが期待されます。
なお、本論文は同雑誌のHighlightsに選ばれました。
(苅谷 慶喜)

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