英国科学誌「Scientific Reports」掲載(平成30年1月オンライン)
GGA2 interacts with EGFR cytoplasmic domain to stabilize the receptor expression and promote cell growth
GGA2はEGFRの細胞質ドメインに結合し、EGFR発現を安定化し細胞増殖を促進する

和栗 聡(わぐり・さとし)
医学部 解剖・組織学講座 教授
研究グループ
植村武文、亀高 諭、和栗 聡
概要
論文掲載雑誌:「Scientific Reports」〔イギリス〕(2018 Jan.22 online) がん細胞増殖を制御する新たなメカニズムの発見 本学医学部 解剖・組織学講座の植村武文講師と和栗聡教授は、細胞内の物流システムの中継点に相当するゴルジ体、エンドソーム、細胞膜の間の小胞を介したタンパク質輸送に注目し、約8年の歳月をかけて研究を続けてきました。 その過程で、GGA2(ギガ2)という細胞質因子がEGFRの量を調節することを見出しました。 具体的には、
- GGA2がEGFRの膜貫通領域直下の細胞質ドメインと結合すること
- GGA2の量が低下すると、EGFRがリソソームという分解を専門に行う場所に運ばれて分解され(寿命が短くなって)、その量が低下してがん細胞の増殖が抑えられること
- 肝細胞がんと大腸がんの一部でGGA2タンパク質の量が多いことが分かり、このメカニズムががんの病態に関連すること
が分かりました。 EGFRは正常細胞の増殖に重要な分子である一方で、がん病態にも関わる事が知られています。そして、実際に抗がん剤としてEGFRの“機能”阻害剤が使用されています。しかし、がん細胞は巧妙な回避策をもっており、薬剤耐性を獲得して再増殖してしまうため、別なメカニズムを利用した抗がん剤の開発が必要です。 本研究の特徴は、遺伝子ではなくてその産物であるEGFRタンパク質の分解メカニズムを見出したこと、言い換えるとGGA2がEGFRの「物流システム」や「リサイクル経路」に関わることを世界で初めて明らかにした点にあります。 本学研究者らは、この研究成果である「EGFR寿命調節メカニズムの発見」が、将来的な抗がん剤開発に貢献できると考えており、今後、関連分子群などを同定して分子基盤の全貌を明らかにしていく予定です。
(植村武文・和栗 聡)
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- 公立大学法人福島県立医科大学 医学部 解剖・組織学講座 講師
- 植村 武文
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