第9回日本循環器学会基礎研究フォーラム (BCVR) Best Abstract Award second place(2025年12月受賞)

TGM2-mediated histone serotonylation represents a novel epigenetic cardioprotective mechanism in HFpEF

福島県立医科大学の助手、小河原崚氏のポートレート写真。白衣を着て微笑む姿。

小河原 崚(おがわら・りょう)

循環器内科学講座 助手

研究グループ

小河原 崚¹、三阪 智史¹、大河内 諭¹、市村 祥平¹、三浦 俊輔¹、横川 哲朗¹ ²、竹石 恭知¹

¹ 福島県立医科大学 循環器内科学講座

² 福島県立医科大学 地域先端循環器病治療学講座

今回の受賞について

日本循環器学会基礎研究フォーラム (BCVR)

日本循環器学会は、循環器疾患の予防・診断・治療の向上を通じて国民の健康に貢献することを目的とし、基礎から臨床までを統合した学術活動を推進している。その中でBCVRは、循環器領域における基礎研究の学術集会として、基礎研究の発展に重要な役割を果たしている。

賞について

循環器基礎研究分野における若手研究者を奨励するための賞。本学会に提出されたアブストラクトの内、応募時に満40歳未満であることが公募の条件であり、一次選考で5名が選出された。当日、講演と質疑応答による最終選考が行われ、第2位にBest Abstract Award second placeが授与された。

概要

左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF)は、多因子が関与する複雑な病態を特徴とし、患者数の増加や予後不良が大きな課題となっている。そのため、病態メカニズムに基づいた新規治療法の開発が強く求められている。

近年、エピジェネティックな転写制御機構の一つとしてヒストンセロトニル化が注目されており、本研究ではそのHFpEFにおける役割を明らかにした。

HFpEFモデルマウスの心臓では、ヒストンセロトニル化のレベルが有意に上昇していた。次に、この修飾を担う酵素TGM2の心筋細胞特異的ノックアウト(CKO)マウスを解析したところ、TGM2欠損は、拡張機能障害、運動耐容能低下、肺うっ血といったHFpEFの病態を悪化させた。

この結果は、TGM2―ヒストンセロトニル化経路が心臓保護的な役割をもつ可能性を示唆する。さらに、HFpEFモデル心において、ヒストンセロトニル化はDNAダメージ応答関連遺伝子群のプロモーター領域への結合が増加し、それらの遺伝子発現を亢進していることが明らかとなった。加えて、この経路を標的とする特定の薬剤介入によってHFpEFの病態が改善する可能性も示された。

以上より、TGM2―ヒストンセロトニル化経路は、DNAダメージ応答を介してHFpEFの病態形成に深く関与しており、HFpEFに対する新たな治療標的となり得る可能性が示された。(小河原 崚)

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