第29回日本心不全学会学術集会 Young Investigator’s Award (基礎)優秀賞(2025年10月受賞)

TGM2-mediated histone serotonylation is a novel cardioprotective epigenetic mechanism in the development of HFpEF

TGM2を介したヒストンセロトニル化は、HFpEFの発症における新規の心保護的エピジェネティック機構である

福島県立医科大学の助手、小河原崚氏のポートレート写真。白衣を着て微笑む姿。

小河原 崚(おがわら・りょう)

循環器内科学講座 助手

研究グループ

小河原 崚¹、三阪 智史¹、大河内 諭¹、市村 祥平¹、三浦 俊輔¹、横川 哲朗¹ ²、竹石 恭知¹

¹ 福島県立医科大学 循環器内科学講座

² 福島県立医科大学 地域先端循環器病治療学講座

今回の受賞について

日本心不全学会

日本心不全学会は、心不全ならびにこれに関連する分野の研究発表の場を提供し、知識や情報の交換を行うことにより心不全に関する研究を推進することを目的としている。

賞について

心不全研究分野における若手研究者を奨励するための賞。アブストラクトを提出した論文の内、応募時に満40歳未満であることが公募の条件であり、審査講演3(基礎)においては、一次選考で6名が選ばれ、最終選考(講演)によりYoung Investigator Award最優秀賞と優秀賞が授与された。

概要

HFpEF(左室駆出率が保たれた心不全)は多因子性の疾患であり、患者数は年々増加している一方で、依然として予後不良である。そのため、病態の理解に基づいた新たな治療法の開発が強く求められている。近年、ヒストンセロトニル化が新たなエピジェネティック制御機構として注目されており、本研究ではHFpEFにおけるその役割を明らかにした。HFpEFモデルマウスでは、心臓組織においてヒストンセロトニル化の亢進が認められた。次に、ヒストンセロトニル化を担う酵素であるTGM2の心筋細胞特異的ノックアウトマウスを作製し解析を行った。その結果、TGM2欠損は、拡張機能障害、運動耐容能の低下、肺うっ血、さらには心筋細胞レベルでの弛緩障害を引き起こし、HFpEFの病態を悪化させることが示唆された。また、HFpEFモデルマウスでは、DNAダメージ応答に関わる遺伝子セットへのヒストンセロトニル化の結合が増加していることを明らかにした。これらの結果から、TGM2―ヒストンセロトニル化経路は、DNAダメージ応答に関わるメカニズムを介して、HFpEFにおける病態形成に深く関与しており、新たな治療標的となり得る可能性が示された。(小河原 崚)

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