2022年 日本心臓核医学会 優秀論文賞(令和4年6月受賞)
Myocardial viability with chronic total occlusion assessed by hybrid positron emission tomography / magnetic resonance imaging
慢性完全閉塞病変の心筋生存能評価に関する PET/MRI の有用性

喜古 崇豊(きこ・たかとよ)
医学部 循環器内科学講座 助教
研究グループ
喜古崇豊1、片平正隆1、遠藤圭一郎1、福島賢慈2、竹石恭知11医学部循環器内科学講座2医学部放射線医学講座
今回の受賞について
日本心臓核医学会
日本心臓核医学会は心臓核医学に関する基礎および臨床研究の推進とその普及をはかり、それを通じて学術文化の発展に寄与すると共に、国際協力につとめ、広く人類の福祉に貢献することを目的としています。
賞について
日本心臓核医学会では、心臓核医学の発展につながる独創的な研究の奨励を目的として、毎年度の優秀論文を顕彰しています。
概要
左心機能が低下する虚血性心疾患の原因として、冠動脈の慢性完全閉塞(CTO:chronic total occlusion)による心筋虚血や壊死が挙げられる。左室壁運動改善のために経皮的冠動脈形成術(PCI:percutaneous coronary intervention)による血行再建が検討されるが、CTO病変の灌流領域の心筋が生存しているか、術前の心筋生存能(viability)評価は治療方針の決定のために重要である。心臓MRIによる遅延造影(LGE:late gadolinium enhancement)とFDG PETによる糖代謝の測定は、viability 評価で活用されているが、両者の関連は未だ十分に検討されていない。また、本学に導入されたPET/MRI装置は、PET および MRI による心臓の評価を同時に行うことで、正確な fusion 画像を作成可能であり診断能の向上が期待される。本研究の目的は、CTO 病変のある虚血性心疾患患者に対して、PET/MRI 装置を用いて FDG による心筋の糖代謝および MRI による LGE の有無を同時に評価し、PCI 後の局所壁運動改善について比較検討することである。
冠動脈造影検査で CTO 病変を認めた15名に対して、FDG PET/MRI 検査を行い PCI を施行した。FDG の相対的集積50%以上をPET viable、LGEの深達度50%未満をMRI viableと定義し、17セグメントの領域に対してPET viable/MRI viable、PET viable/MRI nonviable、PET nonviable/MRI viable、PET nonviable/MRI nonviableの4群にわけて解析を行った。局所壁運動について Cine MRI により5段階で評価を行い、カテーテル治療後6ヵ月において壁運動の改善の程度を比較した。
全255領域で壁運動異常のある152領域に対して解析を行った。カテーテル治療後の壁運動改善の程度は、PET viable/MRI viable 領城で最も大きく、PET nonviable/MRI nonviable 領域で最も低値であった。また、PET viable/MRI nonviable 領域とPET nonviable/MRI viable領域では壁運動改善の程度に有意差はなかった。
PET/MRI 装置を用いた FDG 集積と LGE の同時評価は、慢性完全閉塞性病変に対する血行再建後の壁運動改善の予測に有用であることが示唆された。
関連サイト
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日本心臓核医学会
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