第28回日本リウマチ学会 北海道・東北支部学術集会 若手リウマチ医奨励賞(平成30年11月受賞)

TNFAIP3遺伝子変異に伴うA20ハプロ不全症(若年発症家族性ベーチェット病)の一例

藤田 雄也(ふじた・ゆうや)

医学部 リウマチ膠原病内科学講座 助手

研究グループ

藤田雄也、古谷牧子、浅野智之、佐藤秀三、小林浩子、渡辺浩志、上松一永、右田清志

今回の受賞について

日本リウマチ学会 北海道・東北支部学術集会

フロンティアスピリットあふれる北海道 札幌において日本リウマチ学会の北海道・東北支部学術集会が催されました。診療並びに関連研究をより発展させるような、熱い議論が繰り広げられました。

賞について

ポスターで採択された演題のうち40歳未満の演題登録者を対象とした賞で、抄録および当日掲示されたポスターを審査のうえ、受賞者として選出されました。

概要

TNFAIP3遺伝子がコードするタンパク質であるA20は、NF-κBのシグナル伝達を抑制し制御しています。本遺伝子のヘテロ接合性変異により引き起こされるA20ハプロ不全症は平成30年度より指定難病に追加認定された遺伝性自己炎症性疾患で、日本国内での報告は9家系、30症例しかありません。A20の機能不全により、発熱、口腔内アフタ、陰部潰瘍などのベーチェット病に類似の症状を呈することが知られています。

当院で診断されたA20ハプロ不全症の症例を報告しました。繰り返す発熱、腹痛、口腔内アフタなどの身体所見や同様の症状を認めた濃厚な家族歴から、A20ハプロ不全症を疑い遺伝子検索を行い、同疾患と診断しました。本症例において見出された遺伝子変異(Cys200Alafsx16)はこれまでに報告がなく、新規変異と考えられました。本症例の末梢血単核球細胞を用いて機能解析を行ったところ、TNF-αを用いて炎症を誘発してもA20タンパクの発現が健常人と比較して低下しており、IκB-αのdegradationが遷延していました。また、IL-1βの産生も亢進していました。この機能解析の結果から、新規遺伝子変異(Cys200Alafsx16)を有するA20ハプロ不全症患者ではNF-κBシグナルが過剰に活性化されることにより炎症が生じ、ベーチェット病類似の症状を呈することが示唆されました。

本症例のように家族性・若年発症の患者で、ベーチェット病を含めた自己炎症病態を呈する場合には、TNFAIP3遺伝子異常を考慮する必要があると考えられます。

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