第35回 日本生物学的精神医学会 第2期若手研究者育成プログラム・奨励賞〔平成25年6月〕
Effects of the Taq1A Polymorphism in the Dopamine D2 Receptor Gene on the DARPP-32 Expression of Postmortem Striatum

國井 泰人(くにい・やすと)
福島県立医科大学 医学部 神経精神医学講座 助教
今回の受賞について
【日本生物学的精神医学会】
日本生物学的精神医学会は、精神疾患の生物学的研究を推進するために1974年に設立され、約1500人以上の会員で構成されています。
國井助教が受賞した「若手研究者育成プログラム・奨励賞」は、日本の生物学的精神医学研究の国際的プレゼンスを高めるため設けられた賞で、第2期となる今回は國井助教を含む6名が選ばれました。
受賞式は6月23日、京都で行われた第11回世界生物学的精神医学界国際会議(WFSBP2013)ウェルカムレセプションにて行われ、各受賞者による口頭発表の後、賞状が授与されました。
〔関連サイト〕
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日本生物学的精神医学会 (http://www.jsbp.org/)
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第11回世界生物学的精神医学界国際会議(WFSBP2013) (http://www.wfsbp-congress.org/)
概要
私は、福島精神疾患死後脳バンク( http://www.fmu-bb.jp/index.htm ) の運営に従事しており、同バンクのサンプルを用いた 統合失調症 発症のメカニズムに関する研究として、統合失調症死後脳におけるDARPP-32及び カルシニューリン の免疫組織化学的プロファイルをテーマとして行ってきました。2011年からは、米国国立衛生研究所に留学し、精神疾患死後脳におけるDARPP-32の発現異常とSNPs遺伝子型の関連解析を行いました。 これまでの研究を踏まえ、本研究では統合失調症群及び健常対照群の死後脳サンプル各12例を用いて、 線条体 (被殻、尾状核)における、2つの主要なDARPP-32 transcriptsであるfull-length (FL-DARPP-32)とtruncated (t-DARPP-32)の発現を Immunoblot で調べたところ、統合失調症尾状核でt-DARPP-32の有意な発現増加を認めました。また、これらの発現とドパミンD2受容体遺伝子(DRD2)におけるTaq1A多型との関連を検討したところ、A1アレルは尾状核のt-DARPP-32発現を予測することが分かりました。 今後は、その他のドパミン及びグルタミン酸関連分子の脳内発現を標的プロテオミクス、網羅的プロテオミクスを駆使して測定し、遺伝子多型との関連を解析したいと考えています。 このような知見を蓄積し、遺伝子多型を利用して、脳内の遺伝子発現パターンや認知機能、疾患発症リスクの推測をし、更には発症予防やより病態に即したオーダーメード治療への応用を検討してきたいと思います。
(國井泰人)
連絡先
- 公立大学法人福島県立医科大学 医学部 神経精神医学講座
- 電話 024-547-1331 / FAX 024-548-6735
- 講座紹介ページ http://www.fmu.ac.jp/cms/neuropsy/
- 講座代表メールアドレス neuropsy@fmu.ac.jp