処理水放出後の状況は?

日中の暑さも和らぎ朝晩の冷え込みが気になり出してきましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。10月も後半となり色づき始めた木々の葉も増えて、季節は本格的に秋を迎えていますね。

さて、そんな中でも私たちが関心を寄せるのは、東京電力福島第一原子力発電所で発生した処理水の海洋放出に関するニュースです。8月24日から処理水の海洋放出が始まり2か月が経ち、10月23日には2回目の放出も完了しました。放出前から懸念されていた安全性や風評被害ですが、放出後の状況はどのようなものなのでしょうか。

報道を見る限り、安全性、風評被害共に大きな問題は生じていないようです。まず、安全性の面では、放出から1週間後の8月31日には周辺海水のトリチウム濃度は検出できる下限濃度を下回っていたことが報告されています。さらに放出から1か月後の9月26日に行われた環境省によるモニタリング測定結果でもトリチウム等は検出下限値未満でした。ALPS処理水に係る海域モニタリング情報は環境省のホームページで随時公表されています。

処理水放出から1週間 トリチウム濃度検出できる下限濃度下回る | NHK | 福島第一原発 処理水
ALPS処理水に係る海域モニタリング情報(環境省)

次に、風評被害について。9月9日の福島民友の記事によると、福島県内の59市町村に処理水の放出開始の影響について調査した結果、57市町村で処理水による風評被害などの影響は確認されていないという回答が得られたそうです。また、処理水の放出後、特に返礼品として海産物を取り扱うふるさと納税が急増している県内の自治体もあり、寄附に添えられた応援メッセージからも支援が広がっていることがうかがえます。

放出1か月後の9月23日の記事にも、国内市場に影響ないことが掲載されていました。処理水放出前後で売り上げや価格に変動がないこと、都内の鮮魚店では応援したいと購入する人が増えたこと、関西の市場でも気にすることなく消費拡大に向けて情報を発信していくことが記されています。一方で、中国が日本の海産物輸入禁止措置を取り、政治問題化していることは残念でなりません。

【処理水の波紋】国内市場「影響ない」 消費者に広がる理解:震災・原発ニュース:福島民友新聞社 みんゆうNet (minyu-net.com)
福島県内市町村、ふるさと納税2.5倍 海産物、豪雨被災「支援」:福島民友ニュース:福島民友新聞社 みんゆうNet (minyu-net.com)

処理水と風評被害については、当講座も2021年に第493回福島医学会学術研究会シンポジウムを企画し、お二人の専門家にご講演いただきました。下記リンクから抄録を参照ください。

第493回福島医学会学術研究会シンポウム抄録
(J-STAGE|福島医学雑誌|72 巻 (2022) 2 号)

最後に、シンポジウムでご講演いただいた田内広先生がご出演のMBSニュース動画をご紹介します。動画の中では、田内先生が処理水の海洋放出を問題ないと考える理由についてわかりやすく解説しています。他にも汚染水をきれいにする「ALPS」の仕組みや世界各国のトリチウムの年間排出量なども簡潔にまとめられていますので、ぜひご視聴ください。

MBS NEWS:【処理水の海洋放出】「問題ない」3つの理由を専門家が解説