総合診療医に関する全般の質問
総合診療医って何をする人ですか? どのような医師ですか?
診療科に拘らず、働く地域や医療機関の機能に応じてカメレオンのように仕事内容を変え活躍できる医師です。
ここ数十年、医師は分野別・臓器別の専門領域に分かれて特化する診療能力を高める方向で働いてきました。各領域の診療・研究が進み、以前は困難だった疾患も治療可能になりましたが、反面「小児も、成人も、高齢者も、風邪も、小さな外傷も」といった診療範囲の広さを持つ医師や地域全体を診られる医師が少なくなりました。高齢化、多疾患併存患者の増加などへの対応として、こうした医師のニーズが高まり、総合診療医がその担い手として期待されています。
総合診療と総合内科ってどう違うの?
「総合診療」は一般的に“分野に拘らない診療”という意味で使われ、総合内科も総合診療に含まれると考えます。
「総合診療医」は「家庭医」「病院総合医」に大別され、「家庭医」は小規模施設での診療と住民の健康への対応を中心に地域の医療ニーズに合わせ役割を変えます。「病院総合医」も医療機関に合わせて姿を変え病院で診療する医師。日本の現状では、診断推論、感染症診療、内科的救急・集中治療診療など内科的問題を扱うことが多く、慣習的に総合内科と呼ばれることも。
専門医制度では、総合診療専門医・内科専門医どちらのキャリアプランも選択可能です。
総合診療医ってどんなところにいるの?
専門に関わらず診療に携わる医師の働く場を大きく分けると、「1. 高度医療機関(大学病院等)」「2. 市中病院(〜総合病院、〜市民病院など)」「3. 診療所(クリニック)」「4. 在宅医療」の4つがあります。1〜4のどの場所でも総合診療医が働いていますが、1に近付くにつれて専門診療領域を持つ医師の活躍の場が増え、4に近付くにつれて総合診療医の活躍の場が増えると言えます。
現状では専門領域を持った医師が診療所を開業していることが多いですが、今後総合診療の専門研修を終えた医師が増えると状況は変わってくるでしょう。
総合診療医を目指す学生の方へ
総合診療医になりたいのですが、どうすればいいですか?
医学部卒業後2年間の臨床研修(初期研修)を受ける必要があります。その後、総合診療専門研修プログラムに所属し、最短3年間の研修を終えた後に試験に合格すると総合診療専門医の資格を得ることができ、晴れて総合診療医のお墨付きを得ることになります。
病院総合医(=総合内科医)を最初から目指すなら、臨床研修後に内科専門研修プログラムに進むプランもあります。専門医資格上は「内科専門医」となりますが、総合診療に関わることも可能です。
但し内科専門研修は病院を中心に働く専門医を養成するプログラムのため、小児・救急・診療所・在宅医療の研修を基本的に行わないので注意が必要です。
総合診療医を目指しているのですが、初期研修はどこで受ければいいですか?
初期研修は幅広く診療能力を身につけることが目的とされるため、総合診療医を目指す場合はどこで研修を受けても大丈夫です。
総合診療医の働き方を身近に見たい、という場合には、「総合診療科」のある臨床研修病院での研修をお勧めします。
専門研修はどこで受けられますか?
総合診療専門医は日本専門医機構認定プログラムを運営する医療機関で研修を受けることができます。福島県立医科大学には福島県立医科大学附属病院・白河総合診療アカデミーの2ヶ所があります。
将来総合内科医を目指すならば、総合内科医の元で学ぶことのできる研修プログラムがお勧めです。福島県立医科大学には福島県立医科大学附属病院・会津医療センター・白河総合診療アカデミーの3ヶ所があります。
但し内科専門研修は病院を中心に働く専門医を養成するプログラムのため、「小児・救急・診療所・在宅医療の研修を基本的に行わないこと」「総合診療専門研修プログラムはこれらの項目が必修であること」に注意し研修を選択する必要があります。
当センターでは随時相談を受け付けておりますので、ぜひご連絡ください。
キャリアチェンジを考える医師の方へ
他科専門医を取得済みですが、総合診療医に興味があります。どうすればいいですか?
「日本プライマリ・ケア連合学会」や「日本病院総合診療医学会」では総合診療医育成に関わる医師たちが多く活動しています。学会に一度参加してみると雰囲気がつかめるのでお勧めです。
実際に総合診療医として働く場合には、総合診療専門研修プログラムで研修することはもちろんできますし、総合診療専門医の資格がなくとも病院で総合診療科の一員として働くことも可能です。遠慮なく当センターへご相談ください。
開業希望ですが、総合診療医の研修は役立つでしょうか。
病院での診療と比較すると、診療所を開業される場合は総合診療医としての知識・技能が大いに役立ちます。
診療所では生活習慣病や直接命に関わらない疾患、そして心理・社会面にも関わる機会が非常に多くなります。予防医学や家族・地域のケアも意識する総合研修医の研修から得られる視点は極めて重要です。