膀胱腫瘍
膀胱って何?
膀胱は筋肉でできた袋状の臓器で、骨盤内にあります。腎臓で作られた尿を溜めて排尿するという働きをしています。
その膀胱の内面は尿路上皮という粘膜で覆われています。
膀胱腫瘍って何?
膀胱内面の尿路上皮から発生するのが膀胱腫瘍です。そのほとんどが悪性腫瘍(がん)です。発生頻度として男性が女性より約3-4倍なりやすいことが知られています。また、喫煙や染料との関係も指摘されています。組織学的には尿路上皮がんがほとんどで、その他、扁平上皮がん、腺がん、稀ながんとして肉腫などもあります。最も一般的な尿路上皮がんは肉眼的にはカリフラワー状をしています。再発を繰り返すという特徴があります。
膀胱がんは進行度により表在性がんと浸潤がんに分けられます。
表在性がんとは、膀胱内の粘膜から発生したがんが、粘膜やその下の粘膜下層までにとどまる状態です。腫瘤状に発育せずに膀胱粘膜内を這うように広がる上皮内がんという形態をとるものもあります。
浸潤性がんは、膀胱の筋肉や膀胱外にまで深く根を張るように発育し、転移を生じる可能性があります。
- Tx 原発腫瘍の評価不可能
- T0 原発腫瘍を認めない
- Ta 乳頭状非浸潤がん
- Tis 上皮内がん
- T1 粘膜上皮下結合組織に浸潤する腫瘍
- T2 筋層に浸潤する腫瘍
- T2a 浅筋層に浸潤する腫瘍(内側1/2)
- T2b 深筋層に浸潤する腫瘍(外側1/2)
- T3 膀胱周囲組織に浸潤する腫瘍
- T3a 顕微鏡レベルの浸潤
- T3b 肉眼的レベルの浸潤
- T4 次のいずれかに浸潤する腫瘍
- T4a 前立腺間質、精嚢、または子宮または膣に浸潤
- T4b 骨盤壁、または腹壁に浸潤
T2以上の場合を浸潤性がんといいます。
膀胱がんの症状
最も多い症状として無症候性血尿(痛みなどの症状を伴いません)が挙げられます。
排尿時痛や頻尿などの膀胱炎に似た症状の時もあります。最近は、検診での超音波検査で見つかることも多くなってきています。一回でも血尿を認めたり、治らない膀胱炎のときには、泌尿器科を受診することをお勧めします。
検査、診断
- 1.膀胱鏡
尿道からカメラを挿入して膀胱内を観察します。ほとんどの膀胱がんは膀胱鏡で診断できます。しかし、上皮内がんの場合は肉眼的に診断できない場合もあります。 - 2.尿細胞診
尿中にがん細胞が存在するのかを調べる検査です。複数回行うことで診断の補助となります。 - 3.画像診断
超音波、CT、MRI、排泄性腎盂造影、骨シンチグラフィー
がんの進行度診断や他臓器やリンパ節転移の有無を調べるために各種画像検査を行います。
4. 組織診断
がんの組織診断、進行度診断の確定のためには切除あるいは生検による組織採取が必要です。
治療
1) 表在性がん
- 内視鏡手術(経尿道的膀胱腫瘍切除術:TUR-Bt)
内視鏡を尿道から挿入し、膀胱内の腫瘍を切除する手術です。しかしながら、約50%の症例が数年以内に膀胱内に再発します。 - 術後補助療法:膀胱内注入療法
症例に応じて、再発予防、根治を目的とした抗がん剤やBCGを膀胱内に注入する膀胱内注入療法が適応になります。
2) 浸潤性がん
- 膀胱全摘除術
浸潤性の場合は、基本的には膀胱を温存することはできません。膀胱を摘出して尿路変更することが標準治療になります。しかし、膀胱の外までがんが浸潤している場合、画像検査では判らない転移が存在する可能性があり、手術前に抗がん剤の投与を行ってから膀胱全摘除術を行う症例もあります。 - 抗がん剤による全身化学療法
術前に転移を起こしている可能性がある場合やまた、手術時の診断、進行度により、抗がん剤を全身投与する場合もあります。 - 放射線療法
年齢や体力の問題、合併症などで手術が困難な場合には、放射線照射も選択肢に入ります。
上記治療を組み合わせることで可能な限りの根治を目指すというのが実際の治療です。
膀胱全摘除術を行った後は、新たな尿の流れ道(尿路変向術)を必要とします。
当科では主に、①回腸導管(集尿袋が必要)②尿管皮膚瘻(集尿袋が必要)③回腸利用新膀胱(自然な排尿が可能)を行っております。尿路変向術につきましては、患者様の病状や年齢、生活スタイルなど相談の上で決定させていだだきます。
3)進行がん
明らかに他臓器に転移のある進行症例では、膀胱全摘の適応はありません。抗がん剤による化学療法の適応となります。当科では、GC療法(ジェムシタビン、シスプラチン)やMVAC療法(メソトレキセート、ビンブラスチン、アドリアマイシン、シスプラチン)を主に行っています。