リュージュ(龍樹)の伝言

第61回:世界は遠くなった?近くなった?

2020/06/01

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のソーシャル・ディスタンシングによって、世界は遠くなった。にもかかわらず、世界を身近に感じることができる機会も多くなった、という話。

 

 2週間前にタイ家庭医学会の学術担当者でもある家庭医の友人からメールがあり、会員のためのオンライン・セミナーを開催するので講演をしてほしいというのだ。「いいよ。いつ?」「明後日」・・・オンラインということで依頼する方もされる方も気楽なもので、引き受けてしまった。わざわざバンコクまで旅行しなくても、タイの友人たちとオンラインですぐ繋がることができる。2時間の時差はあるがほぼ同じ時を共有することができる。

 

 タイ家庭医学会では、COVID-19パンデミックが起こるといち早く「How Family Medicine fight COVID-19?」というオンライン・セミナー・シリーズを企画し、COVID-19パンデミックに関連する様々なトピックで学会員に学ぶ場を提供しているという。テーマは、最初の数回はお互いの診療経験を学ぶことから始めて、そこから抽出された参加者のニーズに動かされて、雪だるま式に内容の質と量が膨らんできているようだ。海外からのゲスト・スピーカーもしばしば登場している。「オンライン診療」「心理的サポート」「トラウマを持つ回復者の職場復帰支援」「地球規模の環境の健康」などのテーマが並ぶ。

 

 私が講演したのはシリーズの10回目、ちょうど5 月19日の「世界家庭医の日(World Family Doctor Day 2020)」を記念したセミナーで、大きなテーマは、Sustainable Development Goals(SDGs)とUniversal Health Coverage(UHC)でもしばしばスローガンとなる「Leaving NO ONE BEHIND(誰ひとり取り残さない)」だった。このオンライン・セミナーのおかげで、もうひとり海外からゲスト・スピーカーとして参加していた(今まで会いたいと思っていたが機会を逃していた)イスタンブールのアカデミック家庭医とも「会う」ことができた。

 

 ちなみに私の話は、ごく簡単に要約すると、日本のCOVID-19の現状を紹介してから、私が考えるCOVID-19に関連する日本の「問題点と(→)その結果」を示した。例えば:

・不確実性への不耐性→過度の単純化(白か黒か)

・大病院への過度の依存→大病院の疲弊、医療崩壊

・プライマリ・ヘルス・ケア専門職の不足→トリアージ機能の欠陥

・質の高い情報提供の不足→流言飛語、誹謗中傷、分断

・エビデンスに基づかない政策立案→取り残される多くの弱者

といった感じである(2011年に私たちが福島で経験した大震災・津波・原発事故後の社会の問題点とさして変わっていないのが残念だ)。

 

 こうした世界を身近に感じて学ぶ機会は最近増えてきていて、WONCA(世界家庭医機構)でも、COVID-19に関連して多くのオンライン・セミナー(ウェビナー)を開催しており、インターネット上で公開している。

https://www.youtube.com/channel/UC_NvHfNFH7l1d2rgqgQA1ug



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