

福島県立医科大学 トピックス
本学教員の研究グループによるレター論文が「Frontiers in Public Health誌」に掲載されました
本学医学部放射線健康管理学講座のアミール偉助教、伊東尚美助手、坪倉正治主任教授ら研究グループによる「ALPS処理水放出後の影響に関する検証と分析」に関するレター論文が、「Frontiers in Public Health」誌に掲載されました。その内容を以下に要約します。
2023年8月24日、福島第一原子力発電所から太平洋へのALPS処理水の放出が開始されました。処理水はトリチウム以外の放射性物質を基準値以下まで除去したもので、放射線の健康影響や福島県産水産物への間接的影響が懸念されました。特に放出前から水産物価格下落の噂が広がっていましたが、これらの影響を実証的に検証することが必要でした。
海洋モニタリングでは、放出前後の海水、生物、魚類などのトリチウム濃度を調査。その結果、トリチウム濃度は通常変動範囲内か検出限界値以下であり、生きた魚類や水産物に濃度変化は見られませんでした。
水産物価格の分析では、2019年9月から2024年8月までのデータを使用し、特に2022年9月から2024年8月の24ヶ月間を詳細に評価しました。福島県産水産物と全国平均価格を比較したところ、取扱量・平均価格の低下や全国値との有意な差(p=0.16)は見られませんでした。スピアマンの順位相関係数(※)を計算したところ、全国値と福島県値との間に、正の相関(0.66〜0.90)を示しました。
これらの結果は、福島県産水産物が安全性を理解された上で消費者に支持され、処理水放出による噂が購買行動に影響を与えていないことを示唆しています。
論文では、処理水放出が今後30年続く中で、正確な事実に基づいた情報を継続的に提供する重要性が強調されています。
論文の詳細はこちらから
https://www.frontiersin.org/journals/public-health/articles/10.3389/fpubh.2024.1527347/full