国際医学雑誌「Journal of Gastroenterology」掲載(2026年8月)
rs57494551 increases CXCR5 expression and IgM+ CXCR5+ B-cell infiltration in the portal area of primary biliary cholangitis
rs57494551は、原発性胆汁性胆管炎の門脈域におけるCXCR5発現およびIgM+ CXCR5+ B細胞の浸潤を増加させる
人見 祐基(ひとみ・ゆうき)
生体物質研究部門 准教授
研究グループ
Yuki Hitomi, Yoshihiro Aiba, Kazuko Ueno, Haruka Takahashi, Michihiro Kono, Kazuhiro Sugi, Yuji Teraoka, Shintaro Takaki, Atsushi Naganuma, Motoyuki Kojima, Nao Nishida, Yosuke Kawai, Minae Kawashima, Seik-Soon Khor, Michio Yasunami, Atsumasa Komori, Shinji Shimoda, Kazuyoshi Ishigaki, Masao Nagasaki, Katsushi Tokunaga, Minoru Nakamura
概要
論文掲載雑誌:「Journal of Gastroenterology」 (2026年8月)
原発性胆汁性胆管炎(PBC)は、自己免疫反応に起因する慢性進行性の胆汁うっ滞性肝疾患です。これまで、疾患の罹りやすさ(疾患感受性)と関連する遺伝子領域を網羅的に同定する手法であるゲノムワイド関連解析(GWAS)を用いて、C-X-Cモチーフケモカイン受容体5(CXCR5)を含むヒト染色体11q23.3領域とPBC感受性との間に強固な関連があることが報告されていました。しかし、二次リンパ濾胞の胚中心にてB細胞の恒常性維持に中心的役割を担うCXCR5がどのような分子メカニズムでPBCの疾患感受性に関与しているのかについては不明でした。そこで本研究では、CXCR5遺伝子の個人差に由来するPBCの発症機序を解明するとともに、CXCR5による病態への関与を明らかにする分子遺伝学的な解析を実施しました。
まず、マルチオミックス解析、機械学習を用いた転写因子予測、およびゲノム編集技術であるプライム編集などを用いた総合的な遺伝子機能解析アプローチを用いて、CXCR5周辺の遺伝的バリアントのうち、rs57494551をPBCの疾患原因バリアントとして特定しました。rs57494551は、転写抑制因子であるTEAドメイン転写因子3(TEAD3)との結合を介して、B細胞における内在性CXCR5の発現を制御していました。また、CXCR5の発現は、RNA-seq を用いて取得した遺伝子発現データにおけるmRNA発現パターンの階層的クラスタリングによって示される疾患活動性や、血清IgM、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、Mac-2結合タンパク質糖鎖修飾異性体(M2BPGi)といった門脈域の炎症マーカーと相関していました。さらに、疾患活動性の高いPBC患者の門脈域では、IgM+ CXCR5+ B細胞の数が増加していました。
本研究により、rs57494551のリスクアレルを有するPBC患者において、IgM+ B細胞におけるCXCR5の発現増加が免疫調節不全や門脈域の炎症に影響を及ぼすことが明らかになりました。このことは、CXCR5がPBCの治療標的となり得ることを示唆しています。
連絡先
公立大学法人福島県立医科大学 医学部附属生体情報伝達研究所 生体物質研究部門
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