国内学会英文雑誌「Annals of Nuclear Medicine」掲載(2026年5月)

Whole-brain histogram analysis and top 20% gray and white matter ratio of amyloid positron emission tomography: A comparison with the centiloid scale

アミロイドPETにおける全脳ヒストグラム解析とTop20%皮質白質比:センチロイドスケールとの比較

放射線医学講座の山國遼助教のポートレート。白衣を着て正面を向いている。

山國 遼(やまくに・りょう)

放射線医学講座 助教

放射線医学講座の伊藤浩教授のポートレート。白いワイシャツを着て正面を向いている。

伊藤 浩(いとう・ひろし)

放射線医学講座 教授

研究グループ

山國 遼(放射線医学講座)、清野 真也(放射線部)、八巻 杏奈(放射線医学講座)、島 淳 (京都大学大学院 医学研究科 近未来システム・技術創造部門)、石川 寛延(放射線部)、阿部 十也(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター)、髙野 晴成(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター)、澤本 伸克(京都大学 医学系研究科 近未来型人間健康科学融合ユニット)、関野 啓史(放射線医学講座)、石井 士朗(放射線医学講座)、福島 賢慈(放射線医学講座)、右近 直之(先端臨床研究センター)、笠井 高士(京都府立医科大学 医学研究科 脳神経内科学講座)、成本 迅(京都府立医科大学 医学研究科 精神機能病態学講座)、花川 隆 (京都大学 医学研究科 脳統合イメージング分野)、伊藤 浩(放射線医学講座)、Parkinson’s and Alzheimer’s disease Dimensional Neuroimaging Initiative(PADNI, https://padni.org/)

概要

論文掲載雑誌:「Annals of Nuclear Medicine」 (2026年5月)


目的/背景
 アミロイドPETの定量指標としてCentiloid Scale (CL)が開発され、異なる放射性薬剤間で定量値の比較が可能になった。CL算出にはPET画像の解剖学的標準化が必要であるが、稀に失敗する場合がある。解剖学的標準化が不要な定量指標として、奥山らは全脳ヒストグラム解析(Whole-brain histogram analysis, WBHA)による新たなアミロイド定量法を発表した(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/38907835) 。この解析ではPET/CTで撮影する吸収補正用CTを用いて、PET画像から頭蓋内領域のみを抽出(Brain Extraction, BET)し、頭蓋内のピクセル値について歪度(Skewness)と最頻値/平均値比(MMR)を算出する。これらの指標は38例での検討でSUVRとの良好な相関が報告されているが、現在広く用いられているCLとの相関については報告されていない。また、現在広く公開されているアミロイドPETのデータセットはPET画像とStructural MRI画像の組み合わせが多く、CTを用いたBETではこれらのデータセットを用いた基準値の確率は難しい。さらにCTのBETは商用の画像解析ソフトウェアであるVINCENT(富士フィルム株式会社)が用いられており、今後の普及に課題があった。そこで我々は、無償で公開され広く利用可能なソフトウェアを用いて画像処理を行い、SkewnessやMMRを計測するパイプラインを確立した。また、頭蓋内のアミロイドPET集積の上位20%を切り出すTop20%Map(奥山らが開発した読影補助用の画像表示方法)を発展させ、このTop20%Mapが皮質及び白質にどの程度かの比率Top20% Gray to white ratio (Top20% GW-ratio)も新たな定量指標として確立した。本研究ではCLとWBHAパラメータ(Skewness、MMR、Top20% GW-ratio)の診断精度や相関を検討することを目的とした。

方法
 当院も参加しているParkinson’s and Alzheimer’s disease Dimensional Neuroimaging Initiative (PADNI, https://padni.org/)のデータベースに含まれる18F-Flutemetamol (FMM)症例の画像及びPETと同時期に撮像されたStructural MRIを抽出した。その後、下記の手順にてWBHA値の測定を行った: ①PET画像をstructural MRIにco-register/re-slice/平滑化(SPM12)。②三種類のソフトウェアでのBET (SPM12 /FSL /HD-BET)。③BET済のMRIを用いてPET画像のBETを実施(FSL)。④BET済のPET画像に対してSkewnessとMMRを測定(MATLAB)。⑤SPMでBETしたPET画像に対して、Top20%Mapを作成。この画像に対してSPMで実施したTissue Segmentationを適応し皮質及び白質に分離(FSL)。⑥Top20%Mapに含まれる皮質と白質のボクセル数をカウントしこの比率をTop20% GW-ratioとして算出(MATLAB)した。詳しい画像解析手法については本研究の紹介ページ (https://wbha.kakuigaku.info/home)に詳しく掲載しており、追試験が可能となっている。
 読影結果は、同じPADNIのデータセットを用いてCLの基準値を確立した我々の先行研究(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/40285971)の結果を用いた。また神経心理データ(MMSE及びCDR)を用い、健常群と患者群に分離した。これらの結果について、WBHA及びCLでの予測精度がどの程度異なるかを比較した。また、CLとの相関についても検討を行った。

結果
 CL/Skewnessには負の相関が、CL/MMRおよびCL/GW-ratioには正の相関が確認された。CLとの線形相関はSkewness(HD-BET)が最もよく(R2=0.8177)、次いでSkewness(SPM)、GW-Ratio、Skewness(FSL)と続いた。MMRは他の定量指標との比較で相関が低かった。
読影結果を予測するためのAUC解析ではCL(0.9959)と最も高く、次いで、Skewness(HD-BET) (0.9927)、GW-Ratio(0.9872)と続いた。さらに神経心理検査から正常者の予測ではGW-Ratio (0.6863)、Skewness (SPM) (0.6556)、CL (0.6538)と続いた。

考察
 読影結果の予測ではWBHAはCLを下回ったが、これは読影時にCLを参照していたため、CLが有利な条件での比較であったことも影響したと考えられた。対して、神経心理検査からの正常群の予測についてはGW-Ratioが最も高かった。WBHAはCLに匹敵するアミロイドPETの定量指標であると考えられる。
 WBHAは単なるCLの代替ではない。CLでPET画像を標準脳空間に変換する必要があり、さらにその標準脳空間上で関心領域(VOI)を設定する必要がある。関心領域はTracerによって異なり、例えばアミロイドPETとタウPETではVOIが異なる。しかし、WBHAはVOIの設定が不要であり、全く同じパイプラインで様々なPET画像を処理可能である。
このように、WBHAはアミロイドPETだけでなく、他の頭部PETやSPECTでの定量指標として期待が持てると考えられる。

結論
 本研究で確立したMRIを用いたWBHAはCLと良好な相関を示した。WBHAは何らかの理由でCLが算出できない場合の代替や、視覚所見とCLが乖離した場合の追加の参考指標として活用可能と思われる。

連絡先

公立大学法人福島県立医科大学 医学部 放射線医学講座
電話:024-547-1111(代)
学科ホームページ:https://www.fmu.ac.jp/education/medicine/department/rad/
本研究の紹介ページ:https://wbha.kakuigaku.info/home
メールアドレス:rad@fmu.ac.jp(スパムメール防止のため一部全角表記しています)

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