英国科学誌「European Heart Journal」掲載(2026年1月)
Giant left ventricular pseudoaneurysm after ventricular assist device explantation in Marfan syndrome
マルファン症候群における補助人工心臓離脱後の巨大左心室仮性動脈瘤
今坂 堅一(いまさか・けんいち)
心臓血管外科学講座 教授
研究グループ
狩野 安里, 五十嵐 崇, 今坂 堅一
福島県立医科大学附属病院 心臓血管外科学講座
概要
論文掲載雑誌:「European heart Journal」(2026年1月30日)
我々は、マルファン症候群を有し、複数の高度な心血管手術歴を持つ36歳女性の症例を報告する。
患者は当初、重度の大動脈弁逆流症および胸部大動脈瘤に対し、大動脈基部温存術および部分弓部置換術を施行された。
1年後、急性DeBakey IIIb型解離を発症し、保存的治療が選択された。その後、逆流の再発、進行性心不全、さらには電気的ストームを来したため、大動脈弁置換術およびfrozen elephant trunkを用いた全弓部置換術、さらに左鎖骨下動脈のextra-anatomical bypass(左鎖骨下動脈バイパス)が施行され、続いて中枢型体外膜型人工肺(ECMO)管理が行われた。持続する低心拍出症候群に対しては、Nipro–Toyobo製体外設置型両心補助人工心臓への移行が必要となったが、後に回復を得て離脱した。左心室流入カフは感染なく縫合閉鎖された。術後、バイパスからの逆行性エンドリークを認め、追加のステントグラフト留置および鎖骨下動脈コイル塞栓術が施行された。
3年後、胸部圧迫感を主訴に受診した。CTでは巨大な左心室仮性動脈瘤(7.4 × 8.5 cm)が認められた(パネルA–C、白矢印)。手術所見では、補助人工心臓流入カフが左心室心尖部から離脱し、3 × 2 cmの欠損孔を形成していた(パネルD、アスタリスク)。左前側方開胸により、二重層のウシ心膜パッチを用いて欠損部を閉鎖した(パネルE、オンライン補足動画)。術後経過は良好で、第11病日に退院した。1年後の経過観察では再発を認めていない(パネルF)。補助人工心臓植込みに関連した仮性動脈瘤の発生はきわめて稀であり、これまで散発的な症例報告や小規模シリーズに限られている。
本症例は、生命を脅かし得る重大な合併症の存在を示すとともに、結合組織疾患を有し、複雑な心血管再建術および機械的循環補助を受ける患者において、持続的かつ高度な警戒が不可欠であることを強調するものである。(今坂 堅一)
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