英国学術誌「Journal of Radiological Protection」掲載(2025年12月)
Examining Sheltering-in-Place Operations in Radiation Protection Facilities under Compound Disaster Scenarios: A Case Study from the 2024 Noto Peninsula Earthquake
能登半島地震における志賀原発周辺の放射線防護施設被災経験から考える複合災害時の屋内退避運用
山本 知佳(やまもと・ちか)
放射線健康管理学講座 助手
研究グループ
山本知佳、澤野豊明、松本智紘、野中沙織、深澤伸也、趙天辰、坪倉正治
概要
論文掲載雑誌:「Journal of Radiological Protection」 (2025年12月4日)
災害は社会に多様な影響を及ぼす。原子力災害においては、放射線被ばくによる直接的な健康影響のみならず、避難に伴う間接的な健康影響を含めた多面的な対応が求められる。近年、自然災害の複雑化に伴い、原子力発電所立地地域における実行可能な防災・減災対策の構築とその評価が、重要な課題となっている。
・本研究の目的は、2024 年能登半島地震で震度7 を記録した石川県志賀町において、屋内退避に用いられる放射線防護施設の被災状況を明らかにし、その運用上の課題を検討することである。対象は、志賀原子力発電所の予防的防護措置準備区域(PAZ)および緊急時防護措置準備区域(UPZ)内に設置された、陽圧化機能を有する12 か所の放射線防護施設であり、内閣府が取りまとめた被害報告および現地インタビュー調査をもとに分析を行った。
・( 1)陽圧化システムの設定差圧に関する認識の不一致、( 2)地震による建物の構造的損傷に起因する気密性の低下、という二つの主要な運用上の問題が明らかとなった。これらは、差圧基準やその目的、設定根拠が自治体へ十分に共有されていなかった可能性が示唆される。また、災害時に運用上どの基準値を参照すべきかに関する明確な指針が欠如していたことが、現場の理解や対応のばらつきを生じさせた一因と考えられる。
1. ・複合災害を前提とした耐震性および気密性に関する基準の標準化に加え、平時からの情報共有体制の強化が必要であることが示唆された。また、PAZ 内においても、高齢者や要配慮者にとって即時避難が困難な場合があり、そのような状況では屋内退避が実質的な防護手段となり得ることが再確認された。したがって、屋内退避を現実的な避難形態として制度上も位置づけ直す必要がある。(山本 知佳)
連絡先
公立大学法人福島県立医科大学 医学部 放射線健康管理学講座
電話:大学代表024-547-1111(代)又は024-547-1891
FAX:大学代表024-547-1991(代)又は024-547-1889
講座ホームページ:https://www.fmu.ac.jp/education/medicine/department/houken/
メールアドレス:cy911212@fmu.ac.jp (スパムメール防止のため一部全角表記しています)