米国雑誌「Helicobacter」掲載(2025年11月)
Survey on awareness of Helicobacter pylori and gastric cancer in the Japanese population using an Internet survey
インターネット調査を用いた日本人におけるヘリコバクター・ピロリ菌と胃がんに関する認知度調査
松本 智紘(まつもと・ちひろ)
放射線健康管理学講座 講座等研究員
研究グループ
松本智紘(福島県立医科大学放射線健康管理学講座)、齋藤宏章(福島県立医科大学放射線健康管理学講座)、西川佳孝(京都大学健康情報学分野)、斉藤良佳(仙台厚生病院)、内山大雅(福島県立医科大学放射線健康管理学講座)、垣内俊彦(佐賀大学医学部付属病院)、江口有一郎(ロコメディカル総合研究所)、水野靖大(横須賀市医師会)、坪倉正治(福島県立医科大学放射線健康管理学講座)
概要
論文掲載雑誌:「Helicobacter」 (2025年11月11日)
日本人のピロリ菌および胃がんに関する認識を評価し、ピロリ菌知識の高さに関連する要因を調べるため、2024 年3 月14 日から同年3 月16 日の間に、株式会社マクロミル登録モニターを対象として、全国的なオンライン調査を実施しました。
本研究では、ピロリ菌に関する認識と知識について、感染リスク、関連疾患、検査・治療、胃がんに関連する項目の4 領域にわたり、計11 問33 点で評価をしました。HLS-14 で健康リテラシーを評価し、ピロリ菌検査歴(以降、検査歴)や社会経済的背景を収集しました。
調査には3095 名が回答しました。27.9%(865 名)は検査歴があり、医療職が10.9%(336 名)含まれていました。ピロリ菌に関する認識については、過半数(56.4%)がピロリ菌に関して“特徴などをよく理解している”または”なんとなく知っている”と回答しました。ピロリ菌知識を測る質問全体の正答率は45.7%であり、項目ごとでは感染リスク(57.3% )、ピロリ菌関連疾患(50.9%)、検査と治療(37.5%)、胃癌に関連する項目(44.4%)でした。年齢が高いこと、健康リテラシースコアが高いこと、検査歴があること、医療職であることが知識スコアの高さと有意に関連していました。知識スコアの高さは検査受診への肯定的な態度に関係していました。検査歴のない2,230 名のうち、46.0%(1,024 名)は、今後ピロリ菌検査を受けることに肯定的でした。否定的な回答者は、 “ピロリ菌の検査は自分には必要ないと思う”(35.1%)であり、“費用がかかるから”(33.2%)、“検査が大変そうだから”(27.9%)などを理由として挙げていました。
本研究の結果から、健康リテラシーと過去のピロリ菌検査歴が、ピロリ菌に関する知識向上と関連していることがわかりました。今後の公衆衛生施策においては、健康リテラシー、ピロリ菌検査歴、そして市民の社会的背景を考慮した教育を行う必要があると考えられます。 (松本 智紘)
連絡先
公立大学法人福島県立医科大学 医学部 放射線健康管理学講座
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