スイス国際医学雑誌「International Journal of Molecular Science」掲載(2025年9月)
Midkine Deficiency Attenuates Lipopolysaccharide-induced Pulmonary Inflammation
LPSによる肺の炎症はミッドカインが欠損することにより抑制される
谷野 功典( たにの・よしのり)
呼吸器内科学講座 准教授
研究グループ
福島県立医科大学医学部呼吸器内科学講座(谷野功典、王新涛、二階堂雄文、佐藤佑樹、東川隆一、渡邊菜摘、柴田陽光)
旭川医科大学病院病理部(谷野美智枝)
名古屋大学名古屋大学大学院医学系研究科生物化学講座、糖鎖生命コア研究所(門松健治)
概要
論文掲載雑誌:「International Journal of Molecular Science」 (2025年9月2日)
Midkineは中期胚に発現する低分子量ヘパリン結合蛋白であり、成体では癌細胞や炎症、組織修復の過程で発現が増強し重要な役割を担っているが、肺の炎症におけるmidkineの役割については不明な点が多かった。本研究では、LPSの気管内投与によるマウス肺傷害モデルを使用して、肺の炎症におけるmidkineの役割を検討した。
LPSを野生型およびmidkine欠損マウスに気管内投与し、種々の炎症パラメーターを比較検討したところ、midkine欠損マウスでは野生型マウスと比較して、LPS投与後の肺への好中球遊走が減弱し、気管支肺胞洗浄液中のCXC chemokineであるKCとMIP-2濃度や病理学的肺傷害スコアが低かった。また、ヒト気道上皮細胞株を使用したin vitroの検討においてもLPS刺激後のIL-8の発現はsiRNAによるmidkineのknock-downにより減弱した。これらの結果は、midkineは肺への肺への好中球遊走に関与し、少なくともその作用の一部はIL-8などのCXC chemokineの発現調整を介していることを示している。従って、ARDSなどの急性肺傷害への新規治療ターゲットとしてmidkineが有望である可能性がある。(谷野 功典)
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