日本国際雑誌「JMA Journal」掲載(2025年7月)

Physical Function Changes in Older Adults Living in Temporary Housing after the Great East Japan Earthquake

東日本大震災後の仮設住宅に居住する高齢者の身体機能の変化

福島県立医科大学の腫瘍内科学講座主任教授、佐治重衡氏のポートレート。白衣を着用し、背景には書類や小物が並ぶ。

阿部 暁樹(あべ・としき)

放射線健康管理学講座 講座等研究員

研究グループ

阿部暁樹, 齋藤宏章, 森山信彰, 村上道夫, 伊東尚美, 西川佳孝, 瀧田盛仁, アミール偉, 柴喜崇, 石井武彰, 越智小枝, 山本知佳, 趙天辰, 小坂真琴, 坪倉正治

 

概要

論文掲載雑誌:「JMA Journal」 (2025年7月15日)


災害後において、避難した高齢者の生活環境の変化に伴う「短期的な身体機能障害」とともに「要介護リスクの増大」が、健康寿命へ影響を及ぼすことが知られていますが、長期的な身体機能への影響は未だ明らかではありません。そこで、本研究の目的は、東日本大震災後に仮設住宅へ入居した高齢者の生活環境の一時的な変化から生じる身体機能への「長期的影響」を明らかにすることとしました(図1)。

 本研究は、2013年から2022年の間に運動器健診を受けた福島県相馬市の64歳以上の住民を対象とした、後ろ向きコホート研究です。参加者は、仮設住宅入居経験者群と非仮設住宅入居経験者群の2群に分類されました。主要評価項目は、筋力の指標として「握力」、バランス能力の指標として「片脚立ち時間」としました。

 結論として、震災後に仮設住宅に入居した避難者では、筋力低下への長期的影響は限定的であった一方で、震災後10年間にわたりバランス能力への影響が見られました。

 本研究の結果において注目すべきは、仮設住宅退去後も、影響が長期に持続した点です。したがって、避難者には筋力トレーニングのみならず、バランス能力や転倒予防に注力した「長期的な取り組み」が必要であると考えられます。(阿部 暁樹)

                      図1.本研究の概要

 

連絡先

公立大学法人福島県立医科大学 医学部 放射線健康管理学講座
電話:(大学代表024-547-1111 または、024-547-1891)

FAX:024-547-1889

講座ホームページ:https://www.fmu.ac.jp/education/medicine/department/houken/

メールアドレス:a-toshi@fmu.ac.jp(スパムメール防止のため一部全角表記しています) 

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