日本アレルギー学会学術誌「Allergology International」掲載(2025年6月)

Clinical utility of YKL-40 for understanding pathophysiology of obstructive airway disorder

閉塞性気道疾患の病態生理評価のためのYKL-40の臨床的有用性

鈴木 康仁(すずき・やすひと)

呼吸器内科学講座 助教

研究グループ

鈴木康仁,齋藤純平,菊地正美,佐藤俊,福原敦朗,力丸真美,冨田ひかる,風間健太郎,斎藤弘志,針金莉奈, 佐藤理子,山田龍輝,渡邊菜摘,梅田隆志,東川隆一,佐藤佑樹,峯村浩之,二階堂雄文,金沢賢也,王新涛, 谷野功典,柴田陽光
(福島県立医科大学呼吸器内科学講座)

概要

論文掲載雑誌:「Allergology International」(2025年6月18日)

閉塞性気道疾患の代表である気管支喘息(以下、喘息),慢性閉塞性肺疾患(COPD),そして両者が合併した喘息-COPDのオーバーラップ(ACO)は,いずれも複雑な病態を示すことが知られています.

この病態の複雑さの根底には,背景にある気道炎症の多様性が考えられています.すなわち,好酸球やマスト細胞が関与するType 2炎症と,それ以外(主に好中球)が関与するnon-Type 2炎症が様々な割合で混在し,各疾患の表現型を規定していると考えられています.

近年,これら炎症病態を反映するバイオマーカーの研究開発が進み,Type 2炎症においては,好酸球(末梢血/喀痰)や呼気中一酸化窒素(FeNO)などが,診断や治療効果予測のバイオマーカーとして広く利用されています.一方で,non-Type 2炎症を的確に捉えるバイオマーカーは未だ確立されていません.

そこで我々は,chitinase-3-like protein(YKL-40)に着目し,閉塞性気道疾患における血清および喀痰中YKL-40濃度を測定することで,その臨床的意義を検討しました.その結果,血清YKL-40濃度は好中球優位のnon-Type 2炎症や進行性気流閉塞,さらには将来の増悪リスクと有意に関連していました.また,喀痰YKL-40濃度も同様に好中球性優位のnon-Type 2炎症を反映しつつ,患者の呼吸器症状とも関連することが示されました.

以上より,YKL-40は好中球を主体としたnon-Type 2炎症を反映する新規バイオマーカーとして,閉塞性気道疾患の病態評価や悪化・進行予測に有用である可能性が示唆されました.

今後は,血清および喀痰YKL-40濃度を同時に測定し,Type2炎症関連バイオマーカーと組み合わせることで,患者一人一人に適した治療戦略と精密な疾患管理に応用できる可能性が期待されます.(鈴木 康仁)

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