欧州雑誌「European Journal of Internal Medicine」掲載(2025年7月オンライン)
Association between serum potassium variability during hospitalization and clinical outcomes in patients with heart failure
心不全患者における入院中の血清カリウム変動性と臨床転帰との関連

鈴木 喜敬 (すずき・よしのり)
循環器内科学講座 助手
研究グループ
鈴木喜敬、三阪智史、佐藤悠、大河内諭、小河原崚、市村祥平、横川哲朗、佐藤彰彦、
清水竹史、佐藤崇匡、金城貴士、及川雅啓、小林淳、義久精臣、竹石恭知
概要
論文掲載雑誌:「European Journal of Internal Medicine」(2025年7月16日オンライン)
心不全患者において、血清カリウム値は予後とU字型の関連を持つことが知られているが、入院期間中のカリウム値の変動性が予後に与える影響については明らかにされていない。
本研究では、2015年から2022年の間に、福島県立医科大学附属病院に入院した1,280名の心不全患者を対象にした。入院時および退院時を含む入院中の血清カリウム値について解析を行い、入院中のカリウム変動性を標準偏差(SD)で評価して、臨床パラメーターとの関連性を検討した。退院後の予後に関する検討として、主要評価項目として心臓死、心不全の悪化、急性冠症候群を含む複合心イベント、および全死亡を設定した。
結果、全体の91%(1,165名)の患者は、入院時および退院時のいずれも血清カリウムが正常範囲内であったが、この群では、低カリウムあるいは高カリウム血症を認めた群と比較して、心イベントおよび全死亡の発生率が有意に低かった。
さらに、この群におけるカリウムSDに関する多変量解析では、NYHA分類III/IV、B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、および推算糸球体濾過量(eGFR)がカリウム変動性の独立した関連因子であることが明らかとなった。カリウムSDの四分位に基づく層別解析では、SDが高い群ほど心イベント非発生率および生存率が有意に低く、高いカリウムSDは心イベントおよび全死亡の独立した予後予測因子であった。
入退院時の血清カリウムが正常範囲内であった心不全患者であっても、入院中のカリウム値の変動が大きい場合には、長期的な予後不良と関連していることが示唆された。(鈴木 喜敬)
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