国内学会英文雑誌「Japanese Journal of Radiology」掲載(2026年2月)
Low-intensity rim on T2-weighted brainstem imaging: a universally observed structure exhibiting a negative magnetic susceptibility effect
T2強調画像で確認される脳幹部辺縁の低信号域: 負の磁化率を持つ普遍的に確認される構造
山國 遼(やまくに・りょう)
放射線医学講座 病院助手
伊藤 浩(いとう・ひろし)
放射線医学講座 教授
研究グループ
山國 遼(放射線医学講座)、石川 寛延(放射線部)、石井 士朗(放射線医学講座)、蛭田 亮(脳神経外科学講座)、山田 匠希(病理病態診断学講座)、清野 真也(放射線部)、各務 竹康(衛生学・予防医学講座)、戸村 則昭(一般財団法人脳神経疾患研究所 総合南東北病院)、福島 賢慈(放射線医学講座)、伊藤 浩(放射線医学講座)
概要
論文掲載雑誌:「Japanese Journal of Radiology」 (2026年2月17日)
頭部 MRI は、さまざまな神経疾患のスクリーニングや診断に広く用いられる頻度の高い検査です。難聴の原因の一つとして表在性鉄沈着症が知られており、その頭部 MRI 所見として、脳幹部を含む広範囲の脳表に T2強調画像(T2WI) 低信号域がみられるという特徴的な所見があり、診断に有用です。しかし、私たちは表在性鉄沈着症が存在しないにもかかわらず、脳幹部の脳表に縁取るような T2WI 低信号域が高頻度で観察されることを見出しました。この低信号域は脳幹部以外には認められず、症状もなく、頭部 MRI が撮像された患者に高頻度で確認されるため、正常所見である可能性が高いと考えられました。
解剖学的には、脳幹部を含め脳表には軟膜が存在しています。しかし、同じ軟膜構造を持つ大脳表面では正常例で T2WI 低信号は認められません。このため、脳幹部脳表の T2WI 低信号域の原因として軟膜は考えにくく、別の正常構造が関与している可能性が疑われました。しかし、この脳幹部の T2WI 低信号について既報はなく、頻度や原因は不明でした。そこで私たちは、この脳表の低信号域を T2 physiological rim(T2-PR)と定義し、その頻度および原因についてレトロスペクティブ研究と実験的 MRI 撮像を行い、調査しました。
レトロスペクティブ研究では、発生率を評価するため、3.0T スキャナーを用いて撮像された106 名分のT2WI を対象に、2 名の放射線科医が T2-PR を評価しました。評価は脳幹 18 領域、小脳 2 領域、大脳 2 領域の計 22 領域について、0=存在せず、1=表面積の <50%、2=50%以上だが全体ではない、3=全体、の基準で視覚的に判定しました。評価者間一致度は非常に高く(κ=0.790)、T2-PR は全被験者で確認されました。特に中脳および橋の腹側・外側で頻繁に観察され、特に橋腹側で最も高い発生率を示しました。
実験的 MRI 撮像では、T2-PR の原因を検討するため、健康なボランティアを1名対象にMRI を実施しました。ケミカルシフト効果の評価としてバンド幅およびエンコーディング方向を変更し、磁化率効果の評価として Χ-Separation 解析および異なるEcho Time(TE)を用いた T2WIおよびT2*WI を撮像しました。その結果、バンド幅やエンコーディング方向を変化させても T2-PR に変化は認められませんでした。一方、T2WIおよびT2*WIの低信号は TE の延長に伴い増強し、Χ-Separation 解析では T2-PR が観察された領域に負の磁化率効果が確認されました。
結論として、T2-PR は中脳および橋に普遍的に観察され、これらの領域はいずれも負の磁化率特性を示します。神経線維に含まれるミエリンは負の磁化率効果を示すことが知られており、中脳および橋の表層には高密度の神経線維が走行しているため、T2-PR の原因はこれら神経線維に関連している可能性があります。(山國 遼)
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