米国科学誌「Journal of Pain and Symptom Management」掲載(令和4年12月1日)
Culturally Adapted Consensus Definition and Action Guideline: Japan's Advance Care Planning
日本版アドバンス・ケア・プランニング:修正デルファイ法を用いたコンセンサスに基づく定義及び行動指針

宮下 淳(みやした・じゅん)
白河総合診療アカデミー 教授
研究グループ
宮下淳(福島県立医科大学 白河総合診療アカデミー)清水さやか、福原俊一(京都大学大学院 医学研究科 地域医療システム学講座)白石龍人(神戸大学附属病院 緩和支持治療科)森雅紀、森田達也(聖隷三方原病院 緩和支持治療科)木澤義之(筑波大学 医学医療系 緩和医療学)大川薫(亀田総合病院 在宅ケア科)会田薫子(東京大学死生学・応用倫理センター)満岡聰(医療法人 満岡内科クリニック)西川満則(国立長寿医療センター)石橋由孝(日本赤十字医療センター 腎臓内科)島田千穗(佐久大学 人間福祉学部)則末泰博(東京ベイ浦安市川医療センター 救急集中治療科)荻野美恵子(国際医療福祉大学 医学部)樋口範雄(武蔵野大学 法学部)山岸暁美(慶應義塾大学 医学部 公衆衛生学教室)三浦靖彦(東京慈恵医科大学附属柏病院 総合診療部)山本洋介(京都大学大学院 医学研究科 医療疫学分野)
概要
論文掲載雑誌:「Journal of Pain and Symptom Management」 (令和4年12月1日)
家族中心の意思決定に重きをおく日本のような社会において、アドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning, ACP)の概念フレームワークは確立されていない。本研究において、日本の社会に適応したACPに関するコンセンサスに基づく定義及び行動指針を策定した。
2020–2022年に56名の学際的な専門家集団による修正デルファイ法を行い、日本のACPに関する定義、内容、対象者、行動指針に関する項目を開発した。医師(30名)、ヘルスケア及び生命倫理研究者(10名)、看護師(6名)、介護支援専門員(3名)、社会福祉士(3名)、法律専門家(3名)、チャプレン(1名)で構成された。先行研究レビュー及び専門家へのインタビュー(第1)、項目適切性評価調査(第2及び4)、テレビカンファレンス(第3及び5)、患者/患者家族へのインタビュー(第6)、最終合意形成(第7)の7つのラウンドを行った。コンセンサスレベルを「リッカート尺度(最低点1–最高点9)の7–9点の割合が70%以上」に設定した。
29項目(7-9点の割合:72–96%)が最終的にコンセンサスレベルに達した。ACPは、「必要に応じて信頼関係のある医療・ケアチーム等の支援を受けながら、本人が現在の健康状態や今後の生き方、さらには今後受けたい医療・ケアについて考え(将来の心づもりをして)、家族等と話し合うこと」と定義された。この定義及び行動指針には、未来の心づもりを考えたり、親しい人に伝えたりすることをためらう人に対する配慮と支援が内包された。
個人の自律的な意思決定は周囲の親しい人々によって励まされ、支援されるという概念のもと、日本の文化に適応したACPに関するコンセンサスに基づく定義と行動指針が形成された。この定義及び行動指針によって、日本だけでなく家族中心の意思決定に価値をおく他の社会においてもACPをさらに広めていくことを容易にする可能性がある。
連絡先
- 公立大学法人福島県立医科大学 白河総合診療アカデミー
- 電話:0248-22-2211
- FAX:0248-22-2211
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