カナダ学術誌「Canadian Journal of Cardiology」掲載(2020年 掲載)

Clinical significance of circulating cardiomyocyte-specific cell-free DNA in patients with heart failure: a proof-of-concept study

心不全における心筋細胞特異的セルフリーDNAの臨床的意義

心筋細胞特異的セルフリーDNAに関する研究を行う医師のポートレート。

横川 哲朗(よこかわ・てつろう)

医学部 循環器内科学講座 助教

研究グループ

横川哲朗、三阪智史、君島勇輔、清水竹史、金城貴士、竹石恭知

概要

論文掲載雑誌:「Canadian Journal of Cardiology」 (2020年 掲載)

セルフリーDNAは、循環血漿中に存在する断片化したDNAである。細胞死を反映してゲノムDNAが血中に漏出してセルフリーDNAとして検出され、近年がんの分子解析などで注目されている。しかし、心不全におけるセルフリーDNAの臨床的意義については未解明である。本研究では、32名の心不全患者と28名の対照者からセルフリーDNAを抽出して解析を行った。セルフリーDNA総量は、対照者と心不全患者の両群で差を認めなかった(P=0.343)。心筋細胞特異的なDNAメチル化/非メチル化を応用して、心筋細胞で特異的な非メチル化FAM101A部位をバイサルファイト処理したセルフリーDNAを用いてデジタルPCRで定量して解析した。心不全患者における心筋細胞特異的セルフリーDNAは対照群と比較して有意に高値であった(P=0.003)。心筋細胞特異的セルフリーDNAの測定により、心不全患者と対照群から鑑別が可能であった(AUC, 0.716, P=0.003)。また、心筋細胞特異的セルフリーDNAは高感度トロポニン値と有意な正の相関を示したが(r=0.438, P=0.003)、B 型ナトリウム利尿ペプチドとは相関を認めなかった(r=0.275, P=0.058)。これらの結果から、セルフリーDNAは心不全における細胞死を評価する新たなバイオマーカーとなる可能性が示唆された。

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